学校のすみっこに、
小さな畑がありました。
そこには、きゅうりやトマト、ナスなどが植えられていて、
夏が近づくたびに、少しずつ緑が濃くなっていきました。
その中で、男の子がいちばん楽しみにしていたのは、
スイカでした。
「大きなスイカができたら、みんなで食べたいな」
男の子は、そんなことを思いながら、
毎日、畑の様子を見に行きました。
朝、学校に着くと、
ランドセルを置くより先に畑へ向かう日もありました。
土が乾いていないか。
葉っぱは元気か。
つるはちゃんと伸びているか。
男の子は、小さな先生みたいな顔で、
スイカの苗を見守っていました。
雨の日は、少し心配になりました。
風が強い日は、もっと心配になりました。
それでもスイカのつるは、
ゆっくり、ゆっくり、畑の上を伸びていきました。
そしてある日、
葉っぱのかげに、小さな丸いものが見えました。
「あ、スイカだ」
男の子は、思わず声を出しました。
それは、まだ手のひらに乗りそうなくらい小さなスイカでした。
緑色の皮に、うっすらとしま模様があって、
まるでおもちゃみたいにかわいく見えました。
男の子は、それから毎日、
そのスイカを見るのが楽しみになりました。
「今日は少し大きくなったかな」
「明日はもっと丸くなるかな」
けれど、男の子が思っていたような、
大きなスイカにはなりませんでした。
夏の光を浴びても、
水をあげても、
スイカは小さなままでした。
男の子は、少しだけ残念に思いました。
大きなスイカを抱えて、
みんなに見せるところを想像していたからです。
でも、よく見ると、
その小さなスイカはとてもきれいでした。
まんまるで、
しま模様もちゃんとあって、
畑の中でひっそり光っているようでした。
男の子は、しゃがみこんで、
そのスイカをじっと見つめました。
「小さいけど、ちゃんとスイカだ」
そう思ったとき、
男の子の中の残念な気持ちは、
少しずつやさしい気持ちに変わっていきました。
大きくならなかったから、失敗。
そう決めてしまうのは、
なんだか違う気がしました。
小さくても、
土の中で根を伸ばして、
太陽の光を受けて、
雨の日も風の日も、ここまで育ったのです。
男の子が毎日見に来た時間も、
水をあげた時間も、
心配した時間も、
全部、その小さなスイカの中に入っているようでした。
収穫の日、
男の子は両手でそっとスイカを持ちました。
大きなスイカみたいに重くはありませんでした。
でも、男の子には、
とても大切なものに思えました。
先生が言いました。
「かわいいスイカができたね」
男の子は、少し照れながらうなずきました。
大きくなくても、
立派じゃなくても、
ちゃんと育ったものには、
ちゃんとした物語があります。
その日、男の子は、
小さなスイカを見ながら思いました。
思い通りの大きさにならなくても、
大切に育てたものは、
やっぱりかわいい。
学校の畑でできた小さなスイカは、
男の子にとって、
夏の宝物になりました。
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