午後の光が、部屋の中に静かに入ってきた。
白いカーテンは、窓からの風を受けて、ゆっくり揺れている。
強い風ではない。
ただ、部屋の空気を少しだけ動かすような、やさしい風だった。
黒猫は、そのカーテンの下に座っていた。
何かを待っているようにも見えるし、ただそこにいたいだけのようにも見える。
カーテンのすそが、黒猫の背中にふわりと触れる。
黒猫は少しだけ耳を動かした。
けれど、逃げることはしなかった。
むしろ、その布のやわらかさを知っているように、目を細めた。
カーテンの向こうには、いつもの景色がある。
遠くを歩く人。
少し揺れる木の葉。
どこかへ向かう車の音。
外の世界は、今日も静かに動いている。
でも黒猫にとっては、カーテンの内側がちょうどよかった。
外が見える。
でも、外に出なくてもいい。
光は届く。
でも、まぶしすぎない。
風は入ってくる。
でも、部屋の安心は消えない。
黒猫は、カーテンの影の中で小さく丸くなった。
白い布と黒い毛並み。
その対照が、なんだか一枚の絵のように見えた。
何も特別なことは起きていない。
ただカーテンが揺れて、黒猫がそこにいるだけ。
それなのに、部屋の時間が少しだけやさしくなる。
たぶん暮らしというものは、こういう小さな場面でできている。
誰にも気づかれないような、静かな一瞬。
けれど、あとから思い出すと、なぜか心に残っている景色。
黒猫は眠った。
カーテンはまだ、ゆっくり揺れていた。
まるで黒猫の眠りを守るように、光と風のあいだで、静かに揺れていた。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
よろしければ、
のぞいてみてください









