夕方から夜に変わるころ、空が急に暗くなりました。
さっきまで静かだった部屋の窓に、ぽつぽつと雨の音が当たりはじめます。
黒猫は、いつもの窓辺に座っていました。
しっぽを体に巻きつけて、じっと外を見ています。
遠くの空が、白く光りました。
そのあと少し遅れて、低い雷の音が聞こえてきます。
ごろごろ、という音は、まるで空の奥で大きな何かが寝返りをうったようでした。
黒猫は耳をぴくりと動かしました。
でも、逃げるわけではありません。
ただ少しだけ目を細めて、また外を見つめます。
窓の向こうでは、雨に濡れた屋根が街灯の光を受けて、静かに光っていました。
電線にも、木の葉にも、細かな雨粒が並んでいます。
また空が光りました。
今度はさっきよりも近く、部屋の中まで一瞬だけ白く照らされます。
机の上の本。
読みかけのしおり。
湯気の消えたお茶。
そして、窓辺にいる黒猫の横顔。
すべてが一瞬だけ、絵本の一ページのように浮かび上がりました。
雷は少し怖いものです。
大きな音も、突然の光も、心をびくっとさせます。
けれど黒猫を見ていると、不思議と部屋の中は落ち着いて見えました。
怖いものが外にあるからこそ、部屋の静けさに気づくことがあります。
雨の音があるから、灯りのやさしさがわかります。
雷が鳴るから、そばにいる小さな気配があたたかく感じられます。
黒猫は、窓ガラスに映った自分の姿を少し見てから、小さくあくびをしました。
まるで「大丈夫」と言っているようでした。
外ではまだ、雷が遠くで鳴っています。
でも部屋の中には、本とお茶と黒猫がいます。
それだけで、少し安心できる夜でした。
黒猫と雷。
怖い音の中に、静かなぬくもりを見つけた夜の話です。
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