動物園に、少しのんびりしたパンダがいました。
そのパンダは、毎日おいしそうに笹を食べていました。
朝も、昼も、夕方も。
大きな体をゆっくり動かしながら、笹を一本ずつ手に取って、むしゃむしゃと食べていました。
けれど、そのパンダには、ひそかに大好きな人がいました。
それは、いつも世話をしてくれる飼育員さんです。
飼育員さんは毎朝、きれいな笹を持ってきてくれました。
水を替えてくれたり、部屋を掃除してくれたり、パンダの体の様子をやさしく見てくれたりしました。
パンダは言葉を話せません。
でも、飼育員さんが自分のために毎日来てくれていることは、ちゃんとわかっていました。
ある日のことです。
パンダは、いつものように笹を食べていました。
けれど、ふと手を止めました。
そして、自分が持っていた笹の中から、いちばんきれいな一本を選びました。
それを大事そうに持つと、のそのそと飼育員さんのところへ歩いていきました。
飼育員さんは少し驚いて、しゃがみました。
パンダは、丸い手で笹を差し出しました。
まるで、
「いつもありがとう」
と言っているようでした。
飼育員さんは笑って、そっとその笹を受け取りました。
「くれるの?」
そう声をかけると、パンダは少しだけ得意そうに見えました。
もちろん、笹はパンダの大切なごはんです。
本当なら、全部自分で食べたいはずです。
それでもパンダは、その一本を飼育員さんに渡しました。
それからというもの、パンダは時々、笹を一本だけ持ってきてくれるようになりました。
たくさんではありません。
ほんの一本だけです。
でも、その一本には、言葉にできない気持ちが込められているようでした。
ありがとう。
今日も来てくれてうれしい。
また明日も会いたい。
そんな小さな気持ちが、笹の葉にのっているようでした。
飼育員さんは、そのたびに笑顔になりました。
そして、パンダの頭をそっと見つめました。
パンダは、何も言わずにまた笹を食べ始めます。
いつも通りの顔をして。
何でもないことのように。
でも、きっとパンダにとっては、それが精いっぱいの贈り物だったのだと思います。
大きなプレゼントではなくてもいい。
きれいな言葉で伝えられなくてもいい。
自分の大切なものを、少しだけ誰かに渡したくなる。
それは、とてもやさしい気持ちです。
笹をくれるパンダは、今日も動物園のすみで、のんびり笹を食べています。
そして、大好きな飼育員さんが来ると、また一本だけ笹を選びます。
小さな手に、ありがとうをのせて。
※この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれています
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
Amazon人気ランキングを見る
気になるものがあれば、
そっとのぞいてみてください。









