公園は、朝の冷たい空気をそのまま残していた。
人の気配はまだなく、
ベンチも遊具も、
今日の役目を待っている。
そのベンチのそばに、
一羽のハトがいる。
羽を少しふくらませ、
片足を上げて、
もう片方の足で地面の冷たさを受け止めている。
慣れた仕草だ。
風は冷たいが、
刺すほどではない。
冬が、
もう長居をやめようとしているのがわかる。
ハトは飛ばない。
急ぐ理由がない。
遠くで車の音がして、
すぐに消える。
公園は、
まだ自分の時間だ。
ベンチの下に、
小さなパンくずが落ちている。
つついてみて、
今日はやめておく。
無理をする日でもない。
ハトは、
木の枝を見上げた。
そこには、
昨日までなかった小さなふくらみがある。
名前をつけるほどではない。
でも、
見逃すほど小さくもない。
それで十分だった。
風が少し弱くなり、
太陽の位置が
ほんのわずかに高くなる。
体の奥で、
寒さがほどけていく。
ハトは、
ゆっくりと片足を下ろした。
春は、
まだ先にある。
けれど、
来ることはもう決まっている。
待つことは、
不安ではない。
この公園では、
毎年そうだった。
ハトは、
今日もそこにいる。
特別なことは起きない。
それでも、
世界は少しずつ
やわらいでいく。
それを知っているから、
ハトは飛ばず、
静かに、
春を待っている。
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