2026年7月13日月曜日

黒猫とスイカ畑

黒猫とスイカ畑

夏の朝、黒猫は窓辺で目を覚ました。

開けた窓から入ってくる風には、草と土の匂いが混じっていた。

いつものように庭へ下りた黒猫は、細い道をゆっくり歩き始めた。

道の先には、緑の葉が一面に広がるスイカ畑があった。

大きな葉の下には、丸いスイカがいくつも隠れている。

黒猫は葉の間へ顔を入れ、ひとつずつ確かめるように歩いた。

まだ小さなスイカ。

縞模様がはっきりした大きなスイカ。

土の上で少し傾きながら、静かに夏の日を待っているスイカ。

黒猫には、その丸い実が畑の中で眠っているように見えた。

一番大きなスイカのそばに座ると、葉の陰は思っていたよりも涼しかった。

風が吹くたびに、広い葉が重なり合って揺れる。

遠くではセミが鳴き、青い空には白い雲がゆっくり流れていた。

黒猫は前足でスイカにそっと触れてみた。

表面はつるりとしていて、朝の光を少しだけ映している。

転がしてみようと力を入れたが、スイカはびくともしなかった。

黒猫は何事もなかったように前足を戻し、そのままスイカへ背中を預けた。

畑を吹き抜ける風は、家の窓辺で感じる風よりも広く、やさしかった。

やがて日差しが強くなると、畑の向こうから麦わら帽子をかぶったおばあさんが歩いてきた。

黒猫を見つけたおばあさんは、大きなスイカを軽くたたいた。

ぽん、ぽん、と低く澄んだ音がした。

「もう少しで食べごろだね」

黒猫はその言葉を聞きながら、丸いスイカを見つめた。

食べごろというものが、どんな姿をしているのかは分からない。

けれど、もう少し待つということなら分かった。

黒猫は立ち上がり、来た道をゆっくり戻っていった。

振り返ると、スイカ畑は夏の光の中で静かに揺れていた。

また明日も見に来よう。

あの大きなスイカが、今日より少しだけ夏に近づいているかもしれないから。


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