2026年5月1日金曜日

男の子と舟屋

男の子と舟屋

男の子は、
はじめて舟屋のある海辺の町へ行きました。

海のそばに、
家が静かに並んでいました。

けれど、
ただの家ではありません。

家の一階には、
小さな船が休む場所がありました。

まるで家と海が、
ずっと昔から友だちだったみたいでした。

男の子は、
その景色を見たまま、
しばらく動けなくなりました。

水面はゆっくり揺れて、
舟屋の影をやさしく映していました。

風が吹くたびに、
海のにおいが少しだけ近づいてきます。

男の子は思いました。

「こんな場所が、本当にあるんだ」

写真で見るより、
テレビで見るより、
目の前の舟屋はずっと静かで、
ずっと大きく感じました。

派手な建物ではないのに、
心に残る力がありました。

古い木の壁。
海へ続く入口。
小さな船。
水の音。

そのひとつひとつが、
長い時間を大切にしているように見えました。

男の子は、
きれいな景色というのは、
新しくて大きいものだけではないのだと思いました。

静かにそこにあり続けるものにも、
人の心を動かす力があるのだと、
その日、少しだけわかった気がしました。

帰り道、
男の子は何度も振り返りました。

舟屋は変わらず、
海のそばに並んでいました。

夕方の光が水面に落ちて、
家の影がゆっくり揺れています。

男の子の胸の中にも、
その景色はそっと残りました。

大きくなっても、
きっと忘れない景色。

舟屋のある海辺で見た、
静かでやさしい感動の話です。


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