道のすみっこに、古い土管がひとつ置かれていました。
もう誰かに使われることもなく、草の間で静かに眠っているような土管でした。
そこへ、黒猫がやってきました。
黒猫は土管の入口をじっと見つめて、それからゆっくり中へ入りました。
中は少しひんやりしていて、外の風の音も遠くに聞こえました。
黒猫にとって、その土管はただの古いものではありませんでした。
雨をよける場所であり、昼寝をする場所であり、世界から少しだけ隠れられる小さな部屋でした。
土管の丸い出口から見える空は、いつもより小さく見えました。
けれど、その小さな空が、黒猫にはちょうどよかったのです。
広すぎる世界を全部見なくてもいい。
今日はこの丸い窓から見える分だけでいい。
そんなふうに思いながら、黒猫は前足をそろえて座りました。
夕方になると、土管の中にやわらかな光が差し込みました。
黒猫の影は細長く伸びて、土管の丸みに沿って静かに揺れました。
どこか懐かしくて、少しだけ寂しくて、でも不思議と安心する時間でした。
誰にも見つからない場所にいるようで、ちゃんと世界の中にいる。
黒猫と土管は、言葉もなく、ただ同じ夕暮れを過ごしていました。
古い土管にも、黒猫にも、それぞれの居場所があるのかもしれません。
派手ではないけれど、そこにいるだけで物語になるような、そんな小さな景色でした。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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