朝の商店街に、魚屋さんの声が響いていた。
「今日はいい魚が入ってるよ」
その声に誘われたわけではないけれど、黒猫はいつものように店先にやってきた。
黒い毛並みに、黄色い目。
歩き方は静かなのに、なぜか魚屋さんだけはすぐに気づく。
「お、今日も来たな」
魚屋さんは笑って、まな板の横に小さな切れ端を置いた。
黒猫はすぐには近づかない。
少し離れたところで、じっと魚屋さんを見る。
まるで、ありがとうを言うタイミングを考えているみたいだった。
やがて黒猫はそっと近づき、魚の切れ端をくわえた。
そして少しだけ振り返ってから、路地の奥へ消えていった。
魚屋さんはその背中を見ながら、また包丁を動かす。
商店街の朝は、いつもと同じようで、少しだけやさしい。
人と猫の間に言葉はない。
それでも、毎朝ちゃんと通じているものがある。
黒猫が来る時間になると、魚屋さんは少しだけ手を止める。
今日も来るかな。
そんなふうに思いながら。
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