2026年4月25日土曜日

笹をくれるパンダ

笹をくれるパンダ

動物園に、少しのんびりしたパンダがいました。

そのパンダは、毎日おいしそうに笹を食べていました。
朝も、昼も、夕方も。
大きな体をゆっくり動かしながら、笹を一本ずつ手に取って、むしゃむしゃと食べていました。

けれど、そのパンダには、ひそかに大好きな人がいました。

それは、いつも世話をしてくれる飼育員さんです。

飼育員さんは毎朝、きれいな笹を持ってきてくれました。
水を替えてくれたり、部屋を掃除してくれたり、パンダの体の様子をやさしく見てくれたりしました。

パンダは言葉を話せません。

でも、飼育員さんが自分のために毎日来てくれていることは、ちゃんとわかっていました。

ある日のことです。

パンダは、いつものように笹を食べていました。
けれど、ふと手を止めました。

そして、自分が持っていた笹の中から、いちばんきれいな一本を選びました。

それを大事そうに持つと、のそのそと飼育員さんのところへ歩いていきました。

飼育員さんは少し驚いて、しゃがみました。

パンダは、丸い手で笹を差し出しました。

まるで、
「いつもありがとう」
と言っているようでした。

飼育員さんは笑って、そっとその笹を受け取りました。

「くれるの?」

そう声をかけると、パンダは少しだけ得意そうに見えました。

もちろん、笹はパンダの大切なごはんです。
本当なら、全部自分で食べたいはずです。

それでもパンダは、その一本を飼育員さんに渡しました。

それからというもの、パンダは時々、笹を一本だけ持ってきてくれるようになりました。

たくさんではありません。
ほんの一本だけです。

でも、その一本には、言葉にできない気持ちが込められているようでした。

ありがとう。
今日も来てくれてうれしい。
また明日も会いたい。

そんな小さな気持ちが、笹の葉にのっているようでした。

飼育員さんは、そのたびに笑顔になりました。
そして、パンダの頭をそっと見つめました。

パンダは、何も言わずにまた笹を食べ始めます。
いつも通りの顔をして。
何でもないことのように。

でも、きっとパンダにとっては、それが精いっぱいの贈り物だったのだと思います。

大きなプレゼントではなくてもいい。
きれいな言葉で伝えられなくてもいい。

自分の大切なものを、少しだけ誰かに渡したくなる。

それは、とてもやさしい気持ちです。

笹をくれるパンダは、今日も動物園のすみで、のんびり笹を食べています。

そして、大好きな飼育員さんが来ると、また一本だけ笹を選びます。

小さな手に、ありがとうをのせて。



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