2026年4月10日金曜日

カメとAI美少女が散歩した話

カメとAI美少女の散歩

わたしはニホンイシガメのメス、

今日は、外の空気がいつもと少し違った。

あたたかくて、やわらかくて、甲羅の上をそっとなでていくような感じ。
だからだろうか、あの子が「散歩、行こうか」と言った。

わたしはゆっくり首を伸ばして、外の世界を見た。

外は広い。
広すぎるくらいに。

一歩、前に出る。
地面の感触を確かめるように、ゆっくりと。

でも、そこで止まった。

ここでもう、十分な気がした。

風が来る。
光が落ちる。
音が遠くで揺れている。

それだけで、世界はちゃんとここにある。

あの子がしゃがみこんで、わたしを見ている。
やさしい目だ。少しだけ、不思議そうな顔もしている。

「行かないの?」

そう言われても、わたしは動かない。
動く理由が、あまり見つからない。

ここに、もう全部あるから。

また少しだけ首を伸ばして、空気の匂いを感じる。

やっぱり、いい。
ここがいい。

結局、その日の散歩は、家の前で終わった。

でもきっと、あの子は気づいている。
遠くへ行くことだけが、散歩じゃないことを。

わたしは今日も、ゆっくりと生きている。

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