休日の午後、公園にはたくさんの人がいた。
子どもたちの笑い声、ボールを追いかける足音、ベンチでくつろぐ大人たち。
どこにでもある、やさしくて平和な風景。
そんな中に、ひとつだけ「見えない存在」が混じっている。
人間には姿の見えない、小さな龍。
ちびっこ龍は、ふわりと空気のように公園へとやってきた。
彼が近くに来ると、なぜか風が吹く。
木の葉がさわさわと揺れて、砂が少しだけ舞い上がる。
でも、それが龍のせいだと気づく人は誰もいない。
ただ「今日は少し風があるな」と思うだけだ。
ちびっこ龍は気にしない。
ただ楽しそうな場所が好きで、ふらりと立ち寄っただけだから。
ブランコを見上げたり、走り回る子どもたちの後ろをついていったり。
その姿はまるで、風そのもののようだった。
そんな時、ひとりの人が犬を連れて公園に入ってきた。
ゆっくりとした足取りで、いつもの散歩コースを歩いているようだった。
ちびっこ龍は、なんとなく気になって近づいていく。
すると――
犬が、ぴたりと足を止めた。
そして、まっすぐこちらを見る。
誰もいないはずの空間を、じっと見つめている。
しっぽは揺れていない。けれど、怖がっているわけでもない。
ただ、確かに「何か」を感じ取っているようだった。
ちびっこ龍は少しだけ驚く。
人間には見えないはずの自分に、気づいている存在がいる。
そっと近づいてみると、犬は小さく首をかしげた。
まるで「やっぱりいたんだね」と言っているみたいに。
その瞬間、風が少しだけやわらかく吹いた。
犬の耳がふわりと揺れて、また静かに歩き出す。
飼い主は何も気づかないまま、いつもの散歩を続けていく。
ちびっこ龍は、その後ろ姿を少しだけ見送った。
見えなくても、感じてくれる存在がいる。
それだけで、なんだか少し嬉しくなる。
やがて龍は、また風と一緒に公園を離れていった。
残ったのは、ほんの少しやさしい風だけ。
もしかするとその風は、誰かに気づいてほしかったのかもしれない。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
よろしければ、
のぞいてみてください

0 件のコメント:
コメントを投稿