2026年4月5日日曜日

ちびっこ龍と犬の話

春の公園と小さな龍

休日の午後、公園にはたくさんの人がいた。
子どもたちの笑い声、ボールを追いかける足音、ベンチでくつろぐ大人たち。
どこにでもある、やさしくて平和な風景。

そんな中に、ひとつだけ「見えない存在」が混じっている。

人間には姿の見えない、小さな龍。
ちびっこ龍は、ふわりと空気のように公園へとやってきた。

彼が近くに来ると、なぜか風が吹く。
木の葉がさわさわと揺れて、砂が少しだけ舞い上がる。
でも、それが龍のせいだと気づく人は誰もいない。
ただ「今日は少し風があるな」と思うだけだ。

ちびっこ龍は気にしない。
ただ楽しそうな場所が好きで、ふらりと立ち寄っただけだから。

ブランコを見上げたり、走り回る子どもたちの後ろをついていったり。
その姿はまるで、風そのもののようだった。

そんな時、ひとりの人が犬を連れて公園に入ってきた。
ゆっくりとした足取りで、いつもの散歩コースを歩いているようだった。

ちびっこ龍は、なんとなく気になって近づいていく。

すると――

犬が、ぴたりと足を止めた。

そして、まっすぐこちらを見る。

誰もいないはずの空間を、じっと見つめている。
しっぽは揺れていない。けれど、怖がっているわけでもない。
ただ、確かに「何か」を感じ取っているようだった。

ちびっこ龍は少しだけ驚く。
人間には見えないはずの自分に、気づいている存在がいる。

そっと近づいてみると、犬は小さく首をかしげた。
まるで「やっぱりいたんだね」と言っているみたいに。

その瞬間、風が少しだけやわらかく吹いた。

犬の耳がふわりと揺れて、また静かに歩き出す。
飼い主は何も気づかないまま、いつもの散歩を続けていく。

ちびっこ龍は、その後ろ姿を少しだけ見送った。

見えなくても、感じてくれる存在がいる。
それだけで、なんだか少し嬉しくなる。

やがて龍は、また風と一緒に公園を離れていった。

残ったのは、ほんの少しやさしい風だけ。

もしかするとその風は、誰かに気づいてほしかったのかもしれない。


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