ちびっこ龍は、ふと気がつくと、
自分が祀られている神社へと戻ってきていました。
境内には、たくさんの風鈴が並んでいます。
細い道の両側に吊るされたそれらは、
風に揺れて、小さな音を重ねていました。
――ちりん、ちりん。
やさしく響く音の中を、
ひとりの男の子がゆっくりと歩いています。
ちびっこ龍は、その姿を見て思いました、
あの男の子だ。
気になって、そっと近づき、
男の子の前へと回り込みます。
けれど――
男の子の目には、
ちびっこ龍の姿は映っていません。
そのまま、何も気づかないまま、
風鈴の道を歩き続けていきます。
本殿の前で立ち止まり、
静かに手を合わせ、
小さくお参りをしていました。
やがて顔を上げ、
帰ろうと背を向けます。
その様子を見て、
ちびっこ龍は、少しだけ胸がざわつきました。
――なんで、気づかないの?
そんな気持ちが、
ほんの少しの怒りに変わります。
次の瞬間、
ちびっこ龍は風鈴の道を、
勢いよく駆け抜けました。
ぶわっと強い風が吹き抜け、
――りん、りん、りん、りん!
無数の風鈴が、一斉に大きく鳴り響きます。
その音に驚いて、
男の子はふと足を止め、空を見上げました。
その先に――
空を泳ぐ、ちびっこ龍。
ほんの一瞬、
目が合ったような気がしました。
でも、きっと、気のせい。
男の子はそのまま、
静かに帰っていきました。
ちびっこ龍は、空の上でひとり、
その背中を見送りながら思います。
――また、会えるといいな。
その瞬間、
ふっと景色がほどけていき、
ちびっこ龍は目を覚ましました。
どうやら、夢を見ていたようです。
風の音も、風鈴の音も、
もうどこにもありません。
けれど胸の奥には、
あのときの、やさしい響きだけが、
まだ静かに残っていました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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