2026年4月6日月曜日

ちびっこ龍と男の子の話

風鈴と龍の夕暮れ

ちびっこ龍は、ふと気がつくと、
自分が祀られている神社へと戻ってきていました。

境内には、たくさんの風鈴が並んでいます。
細い道の両側に吊るされたそれらは、
風に揺れて、小さな音を重ねていました。

――ちりん、ちりん。

やさしく響く音の中を、
ひとりの男の子がゆっくりと歩いています。

ちびっこ龍は、その姿を見て思いました、
あの男の子だ。

気になって、そっと近づき、
男の子の前へと回り込みます。

けれど――

男の子の目には、
ちびっこ龍の姿は映っていません。

そのまま、何も気づかないまま、
風鈴の道を歩き続けていきます。

本殿の前で立ち止まり、
静かに手を合わせ、
小さくお参りをしていました。

やがて顔を上げ、
帰ろうと背を向けます。

その様子を見て、
ちびっこ龍は、少しだけ胸がざわつきました。

――なんで、気づかないの?

そんな気持ちが、
ほんの少しの怒りに変わります。

次の瞬間、

ちびっこ龍は風鈴の道を、
勢いよく駆け抜けました。

ぶわっと強い風が吹き抜け、

――りん、りん、りん、りん!

無数の風鈴が、一斉に大きく鳴り響きます。

その音に驚いて、
男の子はふと足を止め、空を見上げました。

その先に――

空を泳ぐ、ちびっこ龍。

ほんの一瞬、
目が合ったような気がしました。

でも、きっと、気のせい。

男の子はそのまま、
静かに帰っていきました。

ちびっこ龍は、空の上でひとり、
その背中を見送りながら思います。

――また、会えるといいな。

その瞬間、

ふっと景色がほどけていき、
ちびっこ龍は目を覚ましました。

どうやら、夢を見ていたようです。

風の音も、風鈴の音も、
もうどこにもありません。

けれど胸の奥には、
あのときの、やさしい響きだけが、
まだ静かに残っていました。

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