2026年4月19日日曜日

イノシシとウリ坊達

イノシシとウリ坊達

山の奥、まだ朝の光がやわらかく差し込む時間。
静かな森の中で、一頭の母イノシシがゆっくりと歩き出した。

その後ろを、ちょこちょこと小さな足音がついてくる。
まだ体に縞模様が残る、ウリ坊たちだった。

「今日は少し遠くまで行くよ」
言葉はなくても、その背中がそう語っているようだった。

この山は、ずっと住んできた場所。
木の匂いも、土のやわらかさも、全部知っている。

でも、少しずつ変わってきていた。
人の気配が増え、静けさが減り、安心して眠れる場所が少なくなっていた。

だから母イノシシは決めた。
もっと静かで、安心できる山へ行こうと。

ウリ坊たちは、まだその理由をよくわかっていない。
けれど、母の後ろを歩いていれば大丈夫だと、どこかで知っている。

落ち葉を踏む音。
遠くで鳴く鳥の声。

ときどき立ち止まって、母は周りを見渡す。
危険がないか、ちゃんと道が続いているか。

その間、ウリ坊たちは寄り添うように集まる。
まるで小さなひとつのかたまりのように。

やがて森の景色が少しずつ変わり始める。
見たことのない木々、少し違う風の匂い。

「ここだね」
そんな気配とともに、母はゆっくりと歩みを止めた。

そこは、静かで、やわらかな土に包まれた場所だった。 光もやさしく、風も穏やかに流れている。

ウリ坊たちは、すぐにその場所を気に入ったようだった。 小さな体で駆け回り、落ち葉に顔をうずめる。

母イノシシは、その様子を静かに見守る。

大きな声も、特別な出来事もない。
ただ、安心して過ごせる場所があるだけ。

それだけで、十分だった。

新しい山での暮らしが、ゆっくりと始まる。

そしてきっと、ウリ坊たちはここで大きくなり、
いつかまた、自分たちの道を歩いていく。

その日が来るまでは——
この静かな森の中で、母の背中を追いながら。



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ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

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