2026年7月18日土曜日

黒猫とパイナップル

黒猫とパイナップル

夏の朝、台所のテーブルに大きなパイナップルが置かれていた。

青々とした葉を頭の上に広げ、黄色と緑色の模様が入った体で、ずっしりと立っている。

買い物から帰ってきた家の人が、あとで食べようと思って置いていったものだった。

そこへ、庭から戻ってきた黒猫が姿を見せた。

黒猫はテーブルの前で足を止めると、見慣れないものを不思議そうに見上げた。

丸いようで丸くない。

木の実のようで、どこか違う。

頭には硬そうな葉が何枚も伸びていて、猫のしっぽのように風で揺れることもない。

黒猫は椅子に飛び乗り、さらにテーブルの上へ移った。

そして、パイナップルのまわりをゆっくりと一周した。

右から眺め、左から眺め、少し離れた場所からもう一度眺める。

それでも、何者なのかは分からない。

黒猫は鼻先を近づけ、そっと匂いをかいだ。

まだ切られていないパイナップルからは、青い葉と南の国を思わせる、少し甘い香りがしていた。

黒猫は食べ物なのかもしれないと思ったのか、前足で軽く触れてみた。

けれど、パイナップルは思ったよりも硬く、びくともしなかった。

もう一度だけ触れてみる。

やはり動かない。

黒猫は少しだけ困ったような顔をして、その場に座り込んだ。

しばらくすると、家の人が台所へ戻ってきた。

包丁でパイナップルの葉と皮を切り落とすと、部屋の中に明るく甘い香りが広がった。

先ほどまで硬い置物のようだったものが、みずみずしい黄色い果物へ変わっていく。

黒猫は少し離れた場所から、その様子をじっと見つめていた。

小さく切られたパイナップルが白い皿に並べられると、夏の光を閉じ込めたようにきらきらと輝いた。

黒猫はまた鼻を近づけたものの、食べることはせず、窓辺へ歩いていった。

どうやら、黒猫の好みではなかったらしい。

けれど窓辺で横になったあとも、ときどき顔を上げて、黄色いパイナップルを眺めていた。

見慣れないものは、少し怖くて、少し気になる。

今日の黒猫にとってパイナップルは、夏の朝に突然現れた、不思議な訪問者だったのかもしれない。


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