2026年7月4日土曜日

黒猫と白猫

黒猫と白猫

公園のすみっこに、古い木のベンチがありました。

そのベンチの下には、一匹の黒猫がよく座っていました。

黒猫は、いつも静かでした。

人が通っても、犬が吠えても、風で落ち葉が転がっても、少しだけ目を細めるだけでした。

まるで、世界の音をぜんぶ聞き終えてしまったような顔をしていました。

ある日の夕方、公園に白猫がやってきました。

白猫は、黒猫とは反対に、少し落ち着きがありませんでした。

ベンチの上にのぼったり、花壇のそばを歩いたり、落ち葉を前足でつついたりしていました。

黒猫は、その様子を黙って見ていました。

白猫は、ふと黒猫に気づくと、少しだけ首をかしげました。

そして、何も言わずに黒猫の近くへ来ました。

黒猫は逃げませんでした。

白猫も、それ以上近づきすぎませんでした。

二匹のあいだには、ほんの少しだけ距離がありました。

でも、その距離は冷たいものではありませんでした。

夕日が公園を薄い金色に染めていきます。

ブランコは誰も乗っていないのに、風で小さく揺れていました。

遠くの道路から、車の音がかすかに聞こえてきます。

黒猫はベンチの下で丸くなり、白猫はその隣に静かに座りました。

黒と白。

まったく違う色をした二匹なのに、夕暮れの中では不思議とよく似て見えました。

たぶん、同じ空を見ていたからかもしれません。

たぶん、同じ風を感じていたからかもしれません。

人は、違うものを見ると、すぐに比べてしまいます。

明るいとか、暗いとか。

強いとか、弱いとか。

正しいとか、間違っているとか。

でも、猫たちはそんなことを考えていないようでした。

黒猫は黒猫のまま。

白猫は白猫のまま。

ただ同じ場所にいて、同じ時間を過ごしていました。

しばらくすると、白猫が小さくあくびをしました。

黒猫はそれを見て、少しだけ目を閉じました。

まるで、「ここにいてもいいよ」と言っているようでした。

白猫は、黒猫の隣で丸くなりました。

二匹の影が、夕方の地面に長く伸びていきます。

その影は、黒でも白でもありませんでした。

ただ、静かに寄り添う二匹の形をしていました。

夜が近づくころ、公園の街灯がぽつりと灯りました。

黒猫と白猫は、まだそこにいました。

言葉はなくても、そばにいるだけで伝わるものがあります。

違っていても、一緒にいられることがあります。

むしろ違うからこそ、となりにいる姿がやさしく見えるのかもしれません。

黒猫と白猫。

その小さな二匹を見ていると、世界は少しだけ静かで、少しだけやさしい場所に思えました。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

PR
楽天市場

よろしければ、
のぞいてみてください


0 件のコメント:

コメントを投稿