2026年7月29日水曜日

黒猫とメロンパン

黒猫とメロンパン

夕方の商店街を歩いていると、パン屋の軒先に一匹の黒猫が丸くなっていた。

その店は、私が週に一度は必ず立ち寄る小さなベーカリーだ。焼きたてのメロンパンの匂いがガラス越しに漂ってきて、思わず足を止めてしまう。黒猫はまるでその匂いを一身に浴びるように、店先の一番いい場所に陣取っていた。

店主さんに聞いてみると、その黒猫は数ヶ月前からふらりと現れるようになった「常連」らしい。誰かに飼われているわけでもなく、かといって完全な野良でもない。ちょうどいい距離感で、この街に溶け込んでいる。

私はいつも通りメロンパンをひとつ買って、店の外のベンチに座った。表面はカリッと香ばしく、中はふんわり甘い。ひと口かじると、黒猫がこちらをじっと見つめてくる。もちろんパンはあげられないけれど、その視線がなんだか嬉しくて、つい話しかけてしまう。

「今日はいい天気だね」

黒猫は答える代わりに、大きなあくびをひとつして、また丸くなった。

こんな何でもない時間が、実は一番贅沢なのかもしれない。忙しい毎日の中で、焼きたてのパンと一匹の猫が、ふと立ち止まる理由をくれる。

明日もきっと、あの黒猫はあの場所にいるのだろう。そしてきっと私も、メロンパンを買いにまた立ち寄る。そんな小さな習慣が、日々を少しだけ優しくしてくれている気がする。


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