2026年8月25日火曜日

メインクーンと普通の猫

メインクーンと普通の猫

縁側の日だまりに、二匹の猫が並んで座っていた。

一匹は、体長がゆうに一メートルを超える大きな猫。ふさふさとした尻尾は毛布のように太く、耳の先には房飾りのような毛が立っている。名前はレオ。メインクーンという、アメリカ生まれの猫種だった。

もう一匹は、ごく普通の猫。近所の空き地で生まれ、この家に拾われてきた三毛猫で、名前はマル。レオの三分の一ほどの大きさしかない。

「今日もでかいなあ、お前」

マルは隣に座るレオを見上げて、いつものようにつぶやいた。初めて出会った日、マルはレオを猫だと思わず、少し身構えたほどだった。近づいてみれば、確かに耳の形も、鳴き声の高さも猫のそれだったが、大きさだけがまるで違っていた。

レオはあくびをひとつして、太い前足をぺろりと舐めた。

「大きいのは、寒いところで生まれた猫だからだって、飼い主さんが言ってたよ」

「寒いところ?」

「アメリカの、すごく雪が降る場所らしい。体が大きいほうが、熱が逃げにくいんだって」

マルはふうん、と鼻を鳴らした。自分は日本の、それもこの町の裏路地で生まれた猫だ。寒さに強くなる必要なんて、これまで考えたこともなかった。

二匹はしばらく黙って、庭に降り注ぐ午後の光を眺めていた。風が吹くと、レオの長い毛がふわりと波打った。マルの短い毛は、風にほとんど動かない。

「なあ、レオ。お前、その毛、暑くないのか」

「夏は正直、つらいよ。でも冬になると分かる。この毛のおかげで、雪の日も外に出られるくらい暖かいんだ」

「へえ」

マルは自分の体を見下ろした。すらりとして身軽で、塀の上を走るのも、狭い隙間をすり抜けるのも得意だ。レオはその図体のせいか、塀に飛び乗るときにいつも少しよろける。

「その代わり、お前は身軽でいいよな」とレオが言った。「僕は塀の上を歩くの、正直怖いんだ」

「代わりに、お前は力があるだろ。この前、庭の重い植木鉢を押しのけてたじゃないか」

「ああ、あれは力仕事は得意なんだ。メインクーンは昔、船に乗ってネズミを捕る仕事をしていたらしいよ。だから体も大きいし、力も強い」

マルはその話に少し驚いた顔をした。自分は誰かに仕事を任された記憶などない。ただ気ままに生き、気ままにこの家に居着いただけだ。

「僕らはさ」とレオが続けた。「見た目も、暮らしてきた場所も全然違う。でも、こうして同じ日だまりで丸くなってると、そんなに違う気はしないな」

マルは答える代わりに、レオの太い前足にそっと頭をこすりつけた。レオは大きな体を丸めて、マルの小さな体を包み込むように寄り添った。

日が傾き、縁側の光の色が少しずつ橙に変わっていく。大きい猫も、普通の猫も、同じ夕暮れの匂いを吸い込みながら、まぶたを閉じていった。

明日もまた、この場所で。それぞれの大きさのまま、それぞれのやり方で。


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