2026年8月19日水曜日
お腹を出して眠るマンチカン
昼下がりのリビングに、やわらかな光が差し込んでいた。
窓辺に敷かれたラグの上で、一匹のマンチカンが仰向けになって眠っている。短い手足をだらしなく投げ出し、丸いお腹を天井に向けて、まるで「今日はもう何もしません」とでも言いたげな格好だった。
名前はモモ。この家にやってきてもうすぐ二年になる。短い脚のせいで、歩く姿はいつもどこか不格好で愛らしい。ソファに飛び乗るのも一苦労で、助走をつけては失敗し、何度も挑戦してようやく成功するのがいつものパターンだ。けれど寝る時ばかりは、その短い脚が誰よりも自由に見えた。
「モモ、そんな格好で寝て、風邪ひかない?」
飼い主の美咲は、洗濯物を畳みながら思わず声をかけた。もちろん返事はない。モモはぴくりと片方の耳を動かしただけで、深い眠りの中にいた。
お腹を出して眠るのは、警戒心のない証拠だと聞いたことがある。猫にとってお腹は急所であり、そこを無防備にさらすというのは、この場所が安全だと信じている証なのだそうだ。美咲はその話を思い出すたびに、少しだけ誇らしい気持ちになる。モモがこの家を、心から安心できる場所だと思ってくれている——そんな気がするからだ。
窓の外では、初夏の風が揺れる木々の葉音を運んでくる。時折、遠くで子どもたちのはしゃぐ声が聞こえるが、それすらもモモの眠りを妨げることはなかった。時折、小さな寝言のような声を漏らしながら、前足がぴくぴくと動く。夢の中で何かを追いかけているのかもしれない。魚だろうか、それとも大好きなおもちゃのねずみだろうか。
美咲はそっと近づき、スマートフォンでその姿を写真に収めた。丸いお腹、投げ出された短い手足、半開きの口。どこをとっても隙だらけで、それでいてこの上なく愛おしい。
「こんな無防備な寝顔、見せてもらえるの、飼い主の特権だよね」
そう呟きながら、美咲はそっとモモの隣に腰を下ろした。起こさないように、静かに、静かに。
しばらくすると、モモがゆっくりと目を開けた。寝ぼけたような表情で美咲を見上げ、小さくあくびをする。そしてまた、お腹を見せたまま、ころんと体の向きを変えて眠りに戻っていった。まるで「まだ寝ていたいから、そっとしておいて」とでも言うように。
午後の時間は、こうしてゆっくりと過ぎていく。マンチカンの短い脚も、丸いお腹も、すべてがこの家の日常に溶け込んでいた。何気ない昼下がりの一コマだけれど、そこには確かな安心と幸せが詰まっている。
お腹を出して眠る猫の姿は、見ているだけで心が緩んでいく。忙しない毎日の中で、そんな無防備な寝顔にふと目を留める瞬間があれば、それだけで十分に癒される——モモを見ていると、いつもそう思わされるのだった。
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