2026年9月7日月曜日
メインクーンという猫、ジャンプ
窓辺に置かれた本棚の上、そこが彼のお気に入りの場所だった。
名前はレオ。メインクーンという猫種にしては標準的な、いや、standardという言葉すら小さく感じるほどの体格を持つ雄猫だ。豊かな毛並みは冬の陽射しを受けて金色に輝き、房飾りのついた耳は、まるで山猫を思わせる野性味を漂わせている。
その日の午後、レオは床に座り込み、じっと本棚の上を見上げていた。目当てのものはそこにある。飼い主が朝、洗濯物と一緒に置き忘れた小さな毛糸玉だった。
普通の猫であれば、助走をつけて跳び上がるところだろう。しかし体重が八キロを超えるレオにとって、ジャンプとは単純な運動ではなく、ちょっとした儀式のようなものだった。
尻尾がゆっくりと左右に揺れる。後ろ足の筋肉がぐっと沈み込み、まるでバネが圧縮されるように力を溜めていく。琥珀色の瞳は微動だにせず、狙った一点だけを見つめていた。
そして、次の瞬間。
床を蹴る音がした。ドスン、というより、シュッという空気を切る音に近かった。大きな体が信じられないほど軽やかに宙を舞う。前足を伸ばし、ふわふわの尻尾がバランスを取るように弧を描く。まるで重力という概念を一瞬だけ忘れてしまったかのような、静かで美しい放物線だった。
着地は驚くほど静かだった。本棚の上、狙い通りの場所に、レオはすとんと収まった。毛糸玉を前足でそっと押さえ、満足げに小さく喉を鳴らす。
窓の外では夕方の風が揺れていた。本棚の上から見下ろす部屋は、いつもより少しだけ誇らしげに見えたことだろう。
大きな体を持つ猫だからこそ生まれる、ゆったりとしたジャンプの美しさ。それは、慌ただしい毎日の中で、ふと立ち止まって眺めたくなる瞬間だった。
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