2026年9月1日火曜日
メイクーンという猫と秋の空
窓の外の空気が、ほんの少しだけ冷たくなった朝だった。
大きな体を丸め、ふかふかの尻尾を鼻先に添えて眠っていたメイクーンが、ゆっくりと目を開けた。名前はまだない。この家の人々は、ただ「メイクーン」と呼んでいた。まるでそれ自体が名前であるかのように。
伸びをすると、床がわずかに軋んだ。大きな体は、伸びをするたびに存在感を増す。前足を思い切り前に伸ばし、腰を高く上げ、それから欠伸をひとつ。窓辺に近づくと、ガラス越しに広がる空が目に入った。
夏の間、あんなに白く眩しかった空が、今日はどこか違って見えた。雲は薄く引き伸ばされ、青はほんの少し澄んでいる。風に揺れる庭の木の葉が、緑から少しずつ色を変え始めていることにも、メイクーンは気づいていた。においが違う。空気の中に、乾いた葉と、遠くの誰かの焚き火のような匂いが混じっていた。
窓辺に座り込み、しばらくその景色を眺めていた。ふさふさの毛並みが朝の光を受けて、輪郭がやわらかく光っている。まだ夏の名残りを抱えたその体は、これから来る季節の冷たさを、まだ知らない。
ふと、庭に一枚の葉が落ちるのが見えた。くるくると回りながら、静かに地面に着地する。メイクーンはその動きを目で追い、少しだけ首を傾げた。まるで「これは何だろう」とでも問いかけるように。
しばらくすると、家の主人が起きてきて、カーテンを開けた。光がさらに部屋に差し込む。メイクーンはひと鳴きして、足元にすり寄った。挨拶のつもりなのか、それとも朝ごはんの催促なのか、それは本人にしか分からない。
秋はまだ始まったばかりだ。空の色も、風の匂いも、少しずつ変わっていく。大きな体を持つこの猫は、季節の変わり目をどう感じているのだろう。窓辺でじっと空を見つめる横顔は、どこか物思いにふけっているようにも見えた。
これから木々はもっと色づき、風はもっと冷たくなっていく。メイクーンは今日も、変わりゆく空の下で、いつもと同じようにゆっくりと過ごしていく。
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