2026年9月20日日曜日
癒される秋のエノコログサが揺れる土手と黒猫
土手を渡る秋風に、エノコログサの穂先がいっせいに揺れていた。
夕暮れが近づくその時間、川沿いの土手道には、金色に染まった草の波がどこまでも続いている。猫じゃらしと呼ばれるその穂は、誰かが撫でているかのように、右へ左へとしなやかに揺れ続けていた。
その草の合間から、黒い影がひょいと顔を出した。
黒猫だった。
艶やかな毛並みに夕日の橙色を纏いながら、彼はエノコログサの茂みをかき分けるようにして、ゆっくりと土手の斜面を歩いていく。時折立ち止まっては、風に揺れる穂先にじゃれつくように前足を伸ばす。まるで、この時間だけのための遊びを見つけたかのようだった。
土手の下には、緩やかに流れる川がある。水面は夕陽を受けて、細かく波打つたびにきらきらと光を弾いていた。黒猫はその光をしばらく見つめると、また向きを変え、草の中へと戻っていく。
風が吹くたびに、エノコログサの穂がさわさわと音を立てる。それはまるで、誰かが小さく笑っているような、優しい響きだった。黒猫はその音に耳を澄ませるように、じっと座り込んだ。尻尾だけが、ゆらゆらと草のリズムに合わせて揺れている。
空はだんだんと茜色から紫がかった色へと変わっていく。遠くの空には一番星が瞬き始めていた。土手の上には他に人影もなく、聞こえるのは風の音と、時折混じる虫の声だけ。
黒猫は満足したように大きく伸びをすると、草の中に体を沈めた。エノコログサがふわりと彼を包み込むように揺れ、その姿を優しく隠していく。
秋の夕暮れ、揺れる猫じゃらしの土手に佇む黒猫の姿は、まるで一枚の絵画のように、静かで、どこまでも穏やかだった。
このまま、しばらくこの時間が続けばいい。そう思わせるほどの、心地よい静けさがそこにはあった。
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