2026年9月20日日曜日

癒される夏の終わりの朝顔の蔓と猫

癒される夏の終わりの朝顔の蔓と猫

朝顔の蔓は、夏の終わりが近づいても、まだ律儀に伸び続けていた。

網戸の隅に絡みついた蔓の先端が、今朝もひとつ、控えめな青い花を咲かせている。もう最盛期は過ぎた。花の数は少なくなり、葉にも少しずつ黄色が混じり始めていたけれど、それでも蔓は諦めずに、少しずつ、少しずつ、庭の柵の方へと手を伸ばしていた。

その様子を、ずっと見つめている猫がいる。

短い脚のマンチカンだ。名前はまだない。この家に迷い込んできてから、まだ数日しか経っていないから、みんな「猫」としか呼んでいなかった。

朝顔の蔓が揺れるたびに、猫の耳がぴくりと動く。風が吹くと、蔓についた葉がさわさわと音を立てて、猫はその音を追うように顔を上げた。低い視線の位置から見上げる朝顔は、いつもより大きく、いつもより眩しく見えているのかもしれない。

「まだ伸びるんだね」

縁側に座っていた老人が、独り言のようにつぶやいた。毎年この時期になると、朝顔の勢いが弱まっていくのを見て、少し寂しい気持ちになる。けれど今年は、この小さな来訪者のおかげで、その寂しさが少しだけ薄まっているような気がした。

猫は蔓に近づいていく。短い脚で、よちよちと、けれど迷いのない足取りで。鼻先を伸ばして、青い花にそっと触れようとする。花はふわりと揺れて、猫は驚いたように一歩下がった。それからまた、恐る恐る近づいていく。

その繰り返しを、老人は飽きることなく眺めていた。

朝顔の蔓は、支柱の一番上まで届くと、行き場をなくしたようにくるくると自分自身に巻きついていた。まるで、夏の終わりをどう迎えればいいのか分からずに、その場でとどまっているようだった。マンチカンはそんな蔓の下に丸くなり、日向ぼっこを始める。短い脚を体の下にしまい込んで、まんまるになった姿は、まるで朝顔の鉢の隣にもうひとつ、丸い植木鉢が置かれたようだった。

風鈴の音が、遠くの家から聞こえてくる。夏はまだ完全には終わっていない。けれど、蝉の声は心なしか弱くなり、代わりに夕方には涼しい風が吹くようになった。季節の変わり目というのは、こんなふうに、静かに、誰にも気づかれないうちに進んでいくものなのかもしれない。

猫が目を細めて眠りにつく頃、朝顔の花はゆっくりとしぼみ始めていた。夕方まで持たずに閉じてしまうのが、夏の終わりの朝顔の特徴だ。それでも蔓は、明日への準備を怠らない。新しいつぼみが、葉の陰にいくつも隠れているのが見える。

老人は立ち上がり、じょうろに水を汲みに行った。マンチカンはその足音で薄目を開け、また眠りに戻る。

夏の終わりの朝顔と、名前のない猫。

どちらも、終わりゆく季節の中で、静かに、自分のペースで生きている。それだけのことが、こんなにも心を穏やかにしてくれるのだと、老人は今更ながらに気づいたのだった。

蔓はまた、明日も少しだけ伸びるだろう。猫は今日も、その傍らで丸くなるだろう。

そうやって、夏は静かに終わっていく。


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