2026年9月16日水曜日
秋の神社とメインクーン
石造りの鳥居をくぐると、境内には金木犀の香りがふわりと漂っていた。落ち葉が敷石の上に静かに積もり、色づいたイチョウの葉が時折くるくると舞い落ちる。
社務所の裏手、木漏れ日が差し込む縁の下から、大きな影がゆっくりと現れた。ふさふさとした尾を揺らしながら歩くのは、この神社に住み着いているメインクーンだった。他の猫よりも二回りは大きな体に、豊かな飾り毛。参拝客の間では「神社の主」と呼ばれ、静かに親しまれていた。
彼はまず、賽銭箱の前にちょこんと座った。誰かが手を合わせるたび、隣で一緒にお辞儀をしているように見えると評判なのだ。今日も一人の老婆が「今年もよろしくね」と声をかけると、メインクーンはゆっくりと目を細め、まるで頷くように首を動かした。
参拝を終えた老婆が去ると、彼は境内を横切り、石段の脇に積もった落ち葉の山へと向かった。ふさりと前足を差し込み、カサカサという音を楽しむように何度も葉をかき混ぜる。その姿はどこか子供のようで、境内を掃除していた宮司が思わず微笑んだ。
「今日は暖かいから、あそこがお気に入りか」
宮司の声に応えるように、メインクーンは石段の一番上まで登り、そこにどっしりと腰を下ろした。眼下には赤や黄色に染まった木々が広がり、風が吹くたびに葉が舞い落ちる。彼はしばらくその景色を眺めていたが、やがて大きなあくびをひとつして、丸くなった。
夕方近くになると、参拝客の数も減り、境内はすっかり静けさに包まれた。橙色の光が石灯籠を照らし、長い影が地面に伸びる。メインクーンは石段からゆっくりと下り、社殿の前まで歩いていくと、まるで一日の締めくくりのようにもう一度そこに座った。
風が吹き、金木犀の香りとともに、一枚の紅葉が彼の鼻先にひらりと落ちる。彼は前足でそっとそれを押さえ、じっと見つめた。まるで、季節の便りを受け取ったかのように。
やがて日が沈みかけ、境内の灯籠に火が入る頃、メインクーンは再び縁の下へと戻っていった。今日もまた、静かな秋の一日が、この神社で終わろうとしていた。
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