2026年9月14日月曜日

マンチカンという猫と水たまり

マンチカンという猫と水たまり

 雨上がりの午後だった。

 庭の隅にできた小さな水たまりに、マンチカンのミルクはそっと顔を近づけていた。短い足で不器用に踏み出すたび、水面がゆらゆらと揺れる。

「なんだろう、これ」

 そんな声が聞こえてきそうな、きょとんとした顔だった。

 水たまりに映る自分の姿を見て、ミルクは一瞬びくりと後ずさる。丸い瞳がまんまるに見開かれ、耳がぴんと立った。もう一匹の猫がそこにいると思ったのかもしれない。おそるおそる、また一歩近づいてみる。

 前足でそっと水面をつついてみると、映っていた「もう一匹の猫」は波紋の中に崩れて消えた。ミルクは驚いたように飛び退いたが、すぐにまた興味津々な顔で戻ってくる。この繰り返しが、なんとも愛らしい。

 空はまだ厚い雲に覆われていたが、雲の切れ間から差し込んだ光が水たまりの表面をきらきらと照らした。その光を追いかけるように、ミルクの視線が上下に動く。短い脚で踏ん張りながら伸び上がる姿は、まるで水たまりの中の光を捕まえようとしているようだった。

 やがて満足したのか、ミルクは水たまりのふちにちょこんと座り込んだ。濡れた前足をぺろぺろと舐めながら、時折り水面を見つめる。その仕草はどこか誇らしげで、まるで「今日はこの水たまりを制覇した」とでも言いたげだった。

 雨上がりの庭に、小さな冒険者がいた。

 水たまりひとつでも、マンチカンにとっては十分すぎるほどの遊び場になる。短い足でぴょこぴょこと歩き回り、時に驚き、時に喜び、そしてまた新しい発見に胸を膨らませる。そんな何気ない日常の一コマが、見ている側の心まで穏やかにしてくれる。

 水たまりが乾く頃には、ミルクはとっくに次の遊びを見つけているのだろう。庭の隅、木の陰、風に揺れる葉っぱ――彼女の世界は、いつだって好奇心でいっぱいだ。


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