2026年9月25日金曜日

癒される秋の野草が茂る田んぼ道と黒猫

癒される秋の野草が茂る田んぼ道と黒猫

刈り入れを終えたばかりの田んぼの畦道に、秋の野草が思い思いに背丈を伸ばしていた。エノコログサが銀色の穂を揺らし、ツユクサの青い花がひっそりと顔を覗かせている。空気にはまだ夏の名残のような乾いた匂いが混じり、けれどもう風は確かに秋のものだった。

その道の真ん中に、一匹の黒猫が座っていた。

毛並みは夕暮れの光を吸い込んだように艶やかで、耳だけがぴくりと動いては、稲刈りの済んだ田の向こうから聞こえてくる虫の声を拾っていた。誰かに飼われているのか、それとも野良なのか、道行く者にはわからない。ただその佇まいには、この田んぼ道の風景に長く馴染んできた者だけが持つ落ち着きがあった。

黒猫はゆっくりと歩き出した。野草の茎が足元をくすぐるたび、耳が小さく揺れる。アキノエノコログサの穂先に鼻先を寄せて、少しだけくしゃみをした。それから何事もなかったように、また前へと歩いていく。

畦道の脇には、誰かが植えたのか野生なのか判然としないコスモスが数輪、風に揺れていた。黒猫はその根元にしゃがみ込み、しばらくじっと動かなかった。まるで、この季節の匂いを確かめるように。

遠くで田んぼの水を落とす音がして、鳥が一羽、稲穂の名残の上を横切っていった。黒猫はその影を目で追ったが、追いかけようとはしなかった。ただ静かに、日が傾いていく空の色を眺めていた。

夕焼けが野草の穂先を橙色に染め始める頃、黒猫は道の端にある古い石に飛び乗った。そこは代々、この田んぼ道を通る猫たちが休憩場所にしてきた場所なのかもしれない。石はほんのりと日中の温かさを残していて、黒猫は目を細めてその温もりに身を委ねた。

野草が風に揺れる音、遠くの家から漂う夕餉の匂い、虫たちの控えめな合唱。それらすべてが溶け合って、ひとつの静かな時間を作っていた。

黒猫はやがて石の上で丸くなり、尻尾を体に巻きつけた。今日という日が、ゆっくりと終わっていく。誰に見られるでもなく、誰に急かされるでもなく、ただ野草の茂る田んぼ道の上で、秋の夕暮れが静かに更けていった。


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