2026年9月24日木曜日

癒される秋のゲンノショウコの咲く畦道とマンチカン

癒される秋のゲンノショウコの咲く畦道とマンチカン

 稲刈りを終えた田んぼが、金色から茶色へと色を変えていく。畦道には赤紫やうすい桃色の小さな花が点々と咲いていて、風が吹くたびに小刻みに揺れていた。ゲンノショウコの花だ。名前を知らなくても、その控えめな可憐さに足を止めたくなる。

 その畦道を、一匹のマンチカンがてくてくと歩いていた。短い脚を忙しなく動かしながら、時折立ち止まっては、花の匂いを嗅ぐような仕草を見せる。丸い体に短い脚という愛らしい姿は、この土の匂いのする風景の中でどこか浮いているようにも見えたが、不思議とよく馴染んでもいた。

 畦道の脇には小さな用水路が流れていて、澄んだ水がさらさらと音を立てている。マンチカンはその音に耳を傾けるように、しばらくじっと座り込んだ。丸い瞳に、揺れるゲンノショウコの花と、遠くに見える里山の稜線が映り込む。

 空はすっかり秋の色をしていた。高く、薄く伸びた雲が、夕方に向けてゆっくりと橙色に染まり始めている。稲の切り株から立ちのぼる土の匂いと、どこからか漂ってくる金木犀の香りが混ざり合い、季節の変わり目を静かに知らせていた。

 畦道の先には、小さな祠がぽつんと佇んでいる。マンチカンはそこまでゆっくりと歩みを進め、祠の前でくるりと丸くなった。長い散歩に少し疲れたのかもしれない。ゲンノショウコの花に囲まれながら、まどろむようにゆっくりと目を閉じる。

 夕暮れが近づくにつれ、畦道を渡る風は少しずつひんやりとしてきた。それでもマンチカンは動こうとせず、花の揺れる音と虫の声に包まれながら、静かな時間の中に溶け込んでいた。誰に急かされることもなく、誰かに見られることも気にせず、ただそこにある景色の一部として。

 やがて日が傾き、畦道全体が茜色に染まる頃、マンチカンはゆっくりと体を起こし、また短い脚で歩き出した。ゲンノショウコの花びらが一枚、風に乗ってその背中をかすめていく。秋の夕暮れの中、小さな猫の後ろ姿が、いつまでも畦道に溶けていくようだった。


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