2026年9月19日土曜日

癒される夏の終わりの土手の草と黒猫

癒される夏の終わりの土手の草と黒猫

夕暮れが近づくと、土手の草は少しずつ橙色に染まっていく。八月の終わり、まだ日中は蝉の声が名残惜しそうに響いていたが、風だけは確かに変わっていた。湿った熱気の中に、ほんの少しだけ乾いた涼しさが混じっている。夏が、静かに幕を下ろそうとしているのだ。

土手の斜面には背の高い草が一面に生い茂り、風が吹くたびに波のように揺れていた。その草の間から、するりと黒い影が現れた。黒猫だった。艶やかな毛並みが夕日を受けて、ところどころ焦げ茶色に光っている。

黒猫はしばらく草の中に座り込み、じっと川の方を見つめていた。水面は夕焼けを映して、赤く、金色に、揺らめいている。対岸では誰かが夕涼みをしているのか、遠くで子どもの笑い声がかすかに聞こえた。

風が強く吹くと、草がざあっと音を立てて倒れ、黒猫の耳がぴくりと動いた。それでも動じることなく、猫は前足を揃えて座り直し、まるで夏という季節そのものを見送っているかのように、静かに川を眺め続けていた。

やがて空はますます深い茜色に変わり、草の穂先が金色の縁取りをまとった。黒猫はゆっくりと立ち上がり、草をかき分けながら土手を歩き出す。振り返ることなく、しかし急ぐでもなく、その足取りはどこまでも自然だった。

季節が変わる境目には、いつも静かな寂しさと、それを上回るやわらかな安らぎがある。土手の草の匂い、涼しくなり始めた風、そして音もなく歩いていく一匹の黒猫。その光景を見ていると、過ぎていく夏を惜しむ気持ちも、どこか穏やかに溶けていくような気がした。

黒猫の姿が草の陰に消えたころ、空はすっかり群青色に変わっていた。土手にはまだ、夏の匂いがほんの少しだけ残っていた。


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