2026年8月28日金曜日

黒猫と日向ぼっこをしているカメ

黒猫と日向ぼっこをしているカメ

 庭の隅、古びた石の縁側の上に、一匹のカメがいた。甲羅は乾いた土のような色をしていて、四本の脚をゆっくりと甲羅の中から出したり引っ込めたりしながら、朝の光を浴びていた。

 そこへ、どこからともなく黒猫がやってきた。足音もなく、まるで影がそのまま歩いているかのように、するりと石の上に飛び乗る。黒猫はカメの隣に腰を下ろすと、しばらくじっとカメを見つめていた。

「今日も暖かいね」

 もちろん黒猫は言葉を話さない。ただ、大きなあくびをひとつして、丸くなった。カメはそんな黒猫のことなど気にもとめず、首をゆっくりと伸ばし、太陽のほうへ向けている。

 二匹のあいだには、特別な会話も、特別な出来事もない。ただ同じ場所に、同じ時間、同じ光を浴びていることだけがあった。風が吹くと庭の葉がさらさらと音を立て、黒猫の耳がぴくりと動く。カメはその音にも動じず、変わらぬ速さで、変わらぬ姿勢のまま、時間の流れとは無縁のような顔をしていた。

 しばらくすると、黒猫はごろりと横になり、カメの甲羅にそっと体を寄せた。冷たいはずの甲羅も、日差しを浴びて少しだけ温かくなっている。黒猫はその温度を確かめるように、頬をくっつけたまま目を閉じた。

 急ぐことも、争うことも、何かを求めることもない。ただ日向にいる、それだけで十分だという顔をして、黒猫とカメは並んでいた。

 誰も見ていない庭の片隅で、そんな静かな時間が、今日もゆっくりと流れていた。


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