2026年8月14日金曜日
黒猫と小学校
放課後の校門を出ると、いつもそこに座っている黒猫がいる。誰が名付けたわけでもないのに、近所の子どもたちは「くろちゃん」と呼んでいる。ランドセルを背負った小学生たちが通り過ぎるたびに、耳だけをぴくりと動かして、目で追いかけている。
その黒猫は、決して人に近寄りすぎることはない。かといって完全に警戒しているわけでもなく、少し離れたブロック塀の上や、校門脇の植え込みのあたりでちょこんと座っている。まるで「今日もちゃんと見ていたよ」とでも言うように、通学路の風景に静かに溶け込んでいる。
低学年の子が「くろちゃん、ばいばい」と声をかけると、しっぽの先だけをゆっくり揺らして応える。それだけのことなのに、子どもたちはなんだか嬉しそうに、友達と顔を見合わせて笑う。誰かに褒められたわけでも、特別なことをしてもらったわけでもないのに、黒猫の存在が下校時間をほんの少し楽しみなものに変えている。
夏の暑い日は校舎の日陰でぐったりと伸び、冬は日なたを見つけてまんまるになって丸まっている。季節が変わっても、その場所にいる安心感は変わらない。卒業していく子どもたちは、最後の日にもう一度校門を振り返り、黒猫がいつもの場所にいるのを確認してから帰っていくという。
新しい一年生が入学してくるたびに、また新しい「くろちゃんとの出会い」が生まれる。黒猫にとっては、毎年少しずつ顔ぶれが変わる小学生たちを、ただ静かに見守り続けているだけなのかもしれない。けれど、その変わらない佇まいこそが、通学路にそっと安心感を添えているように思える。
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