2026年8月18日火曜日

猫の1日

猫の1日

 朝の光がカーテンの隙間から差し込むころ、白黒の猫・ミケルはすでに目を覚ましていた。とはいえ、すぐに起き上がるつもりはない。日向のできた床の一角に体を丸め、しばらくはまぶたを半分だけ開けて、部屋の空気が動くのを眺めていた。

 やがて台所からカチャリと小さな音がする。飼い主が起きたのだ。ミケルは伸びをひとつ、前足をぐっと突き出し、背中を弓なりにしならせてから、ようやく立ち上がった。尻尾をピンと立てて廊下を歩く姿は、まるで自分の家を点検して回る主のようだった。

 朝ごはんの皿の前では行儀よく座って待つ。とはいえ、待ちきれずに小さく「にゃ」と催促の声を上げるのはいつものことだ。カリカリと音を立てて食べ終えると、今度は窓辺へ。そこは一日のうちで一番のお気に入りの場所だった。

 外では雀が数羽、電線に止まっている。ミケルは瞳孔を細め、尻尾の先だけをゆらゆらと揺らしながら、狩人の血が騒ぐのを感じていた。もっとも、窓ガラスの向こうへ出ていくつもりはさらさらない。ただ眺めているだけで満足なのだ。

 昼が近づくと、日向は部屋の反対側へと移動する。ミケルもそれを追いかけるように場所を変え、丸くなって眠りに落ちた。夢の中では、きっと広い野原を走り回っているのだろう。時折、前足がぴくりと動き、ひげがかすかに震えた。

 午後、飼い主が仕事から少し離れて声をかけると、ミケルは薄目を開けて「知ってるよ」とでも言いたげに、ゆっくりと尻尾を一振りした。撫でられるとゴロゴロと喉を鳴らし、また眠りの続きへと戻っていく。

 夕方になると、家の中に少しずつ夕日の色が広がっていく。ミケルは伸びをして、今度は活動的な時間の始まりだと言わんばかりに、おもちゃのねずみを見つけては前足で転がし、部屋の中を駆け回った。狩りごっこの時間は、一日の中でも特に生き生きとしている。

 夜、家族が集まる食卓の下で、ミケルは静かに丸くなる。にぎやかな声を子守唄代わりに、少しずつまぶたが重くなっていく。今日も特別なことは何もなかったけれど、日向を渡り歩き、窓の外を眺め、誰かに撫でられる——そんな一日こそが、ミケルにとってのかけがえのない毎日なのだった。

 明日もきっと、同じような一日が待っている。それでもミケルは、少しも退屈そうな顔をしていなかった。


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