2026年8月21日金曜日
ウォーキングマシンを歩いているマンチカンという猫
短い足を精一杯伸ばして、ミルクは今日もウォーキングマシンの上を歩いていた。
きっかけは、飼い主が引っ越しの荷物の中から古いウォーキングマシンを引っ張り出してきたことだった。埃をかぶったそれをリビングの隅に置いた瞬間から、ミルクの目の色が変わった。ベルトの上を恐る恐る前足で触れてみると、かすかにキュルキュルと音がする。それだけで、もう夢中だった。
マンチカン特有の短い脚は、他の猫よりも歩幅が小さい。だから最初のうちは、ベルトの動きについていけずに何度もつんのめっていた。それでも諦めなかった。転んでは起き上がり、また小さな四本の脚を交互に動かす。まるで自分の短さを乗り越えようとするかのように。
「ミルク、また歩いてるの?」
飼い主が声をかけても、ミルクは振り返らない。真剣な表情でまっすぐ前を見つめ、耳をぴんと立てたまま、ひたすら歩き続けている。その横顔には、遊びとは少し違う、何かに挑んでいるような真剣さがあった。
三日目になると、ミルクはようやくベルトの速度に脚を合わせられるようになった。トコトコ、トコトコ。短い脚が規則正しくベルトを踏みしめる音が、静かな部屋に響く。振り落とされることもなくなり、むしろ少し得意げに歩いているようにさえ見えた。
窓から差し込む夕方の光が、歩き続けるミルクの背中をオレンジ色に染めていた。息を弾ませながらも、その目はどこまでも澄んでいて、まるでどこか遠い場所を目指しているようだった。
十分ほど歩いたところで、ミルクはようやく足を止めた。ベルトから飛び降りると、満足そうに一度だけ「にゃあ」と鳴き、そのままソファの上にどさりと体を投げ出した。
短い脚で、今日もまた少しだけ前へ進んだ。ミルクにとってウォーキングマシンは、ただの運動器具ではなく、自分だけの小さな冒険の舞台なのかもしれない。
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