2026年9月18日金曜日
ニホンイシガメの日向ぼっこ
小川の水面が、朝の光を受けてきらきらと揺れていた。
流れの緩やかな淵に張り出した大きな石。そこに、一匹のニホンイシガメがそっと這い上がっていた。甲羅の縁はほんのり赤みを帯び、ところどころに水草の欠片がくっついている。昨夜の雨で水量が増えたせいか、石の表面はまだ少し湿っていた。
カメは前脚を石にかけ、ゆっくりと体を持ち上げると、首を長く伸ばした。まるで、これから始まる一日の光を、少しでも多く浴びようとするかのように。
周りには誰もいない。聞こえるのは、川のせせらぎと、遠くの林で鳴く鳥の声だけだった。カメはしばらくじっとしていたが、やがて右の前脚をほんの少しだけ広げ、太陽のほうへ向けた。冷たい水の中で強張っていた体が、光の熱にゆっくりとほどけていくようだった。
石の上には、小さな影がひとつ。カメの影は、水面に映る木漏れ日と重なって、揺れながら形を変えていた。
しばらくすると、上流から一匹の小さなアメンボが流れてきて、カメのすぐそばの水面をすいすいと横切っていった。カメは首をわずかに動かしてそれを目で追ったが、特に気にする様子もなく、また元の位置に頭を戻した。急ぐことは何もない。今日という日は、まだ始まったばかりだった。
太陽が少しずつ高くなり、石の表面も、カメの甲羅も、じんわりと温かくなっていく。カメは目を細め、ときどき瞬きをしながら、その暖かさをただ受け止めていた。人の暮らす町からそう遠くない場所なのに、ここには時間がゆっくりと流れているようだった。
やがて雲が一つ、太陽の前をゆっくりと通り過ぎた。日差しが少し翳ると、カメはわずかに首をすくめた。けれど雲はすぐに流れていき、また光が戻ってくる。カメはそれを待っていたかのように、再び首を伸ばした。
石の上での日向ぼっこは、まだしばらく続きそうだった。急かすもののない川辺で、カメはただ、光と水と風の中に身を置いていた。それだけで、十分に満ち足りているように見えた。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
コータのAmazonページへ
よろしければ、
のぞいてみてください
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 件のコメント:
コメントを投稿