2026年9月12日土曜日

メインクーンと星空

メインクーンと星空

古い一軒家の縁側に、その猫は座っていた。

名前はレオ。メインクーンという種類の猫で、体はほかの猫よりもひと回りもふた回りも大きい。ふさふさとした尻尾は、まるで狐のように太く長く、夜風に吹かれるたびにゆっくりと揺れていた。

季節は秋の終わり。空気はひんやりと澄んでいて、庭の草むらからは虫の声がまばらに聞こえてくる。飼い主の老婆は、もう眠りについたのだろう。家の中の明かりはとうに消え、レオだけが縁側にひとり残されていた。

レオは顔を上げた。

見上げた先には、これまで見たどの夜よりも澄んだ星空が広がっていた。街灯の少ないこの土地では、星々が競うように瞬いている。天の川はうっすらと白い帯を描き、無数の光の粒が黒い布の上にこぼれ落ちたかのようだった。

レオはしばらく、身じろぎもせずにそれを眺めていた。大きな瞳に、星々の光が小さく映り込む。猫にとって星空にどんな意味があるのか、それは誰にもわからない。ただレオは、その夜だけは妙に静かで、妙に落ち着いた気持ちでいるようだった。

ふと、庭の隅で何かが動いた。小さな野良猫が一匹、垣根の隙間からこちらを覗いている。レオよりもずっと小柄なその猫は、警戒するようにじっとレオを見つめていたが、やがて恐る恐る縁側に近づいてきた。

レオは動かなかった。ただ、少しだけ体を横にずらし、隣に座る場所を空けてやった。

野良猫はしばらく迷っていたが、やがてそっと隣に腰を下ろした。二匹の猫は、それからただ黙って、同じ星空を見上げていた。大きさも育ちも違う二匹だったが、その瞬間だけは、まるで古くからの友のように寄り添っていた。

風が吹き、庭の木々がさらさらと音を立てる。どこか遠くで、列車の走る音がかすかに響いた。それ以外は、ただ静寂と、星の光だけがそこにあった。

どれくらい時間が経っただろうか。野良猫はやがて音もなく立ち上がり、来た時と同じように垣根の向こうへと消えていった。レオはその後ろ姿を目で追い、それからまた静かに星空へと視線を戻した。

夜はまだ深い。レオはふさふさの尻尾を体に巻きつけ、縁側で丸くなった。閉じかけた瞳の奥に、最後まで星の光が揺れていた。

明日もまた、同じ場所で、同じ空を見上げるのだろう。そんなことを考えているのかどうかはわからないが、レオの寝顔はどこか満ち足りているように見えた。


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