2026年9月12日土曜日

メインクーンという猫と電気ストーブ

メインクーンという猫と電気ストーブ

窓の外は、灰色の雲が低く垂れ込めていた。十二月に入ってから、この部屋の温度計はずっと機嫌が悪い。

「レオ、また来たの」

私がそう声をかけると、部屋の主のようにふるまう大きな猫が、のっそりと顔を上げた。メインクーンという種類らしいと知ったのは、この子を迎えてしばらく経ってからのことだ。普通の猫よりもひとまわりもふたまわりも大きく、耳の先には房のような飾り毛がついていて、まるで山の中からやってきた小さな獣のような佇まいをしている。

その日、私は奮発して電気ストーブを買っていた。灯油の匂いも、火をつける手間もいらない。スイッチひとつで、オレンジ色の光がゆっくりと部屋の空気を暖めていく、そんな道具だった。

箱から出して電源を入れた瞬間、レオの耳がぴくりと動いた。

「なに、気になる?」

問いかけには答えず、レオは低い体勢のまま、じりじりとストーブに近づいていった。長い尻尾が左右にゆっくりと揺れている。警戒しているのか、それとも興味を抑えられないのか、その両方だったのかもしれない。

しばらく匂いを確かめるように鼻を近づけたあと、レオはふいっと視線を上げ、私の顔を見た。まるで「これは、安全なものか」と尋ねているようだった。

「大丈夫だよ、あったかいだけだから」

その言葉が通じたわけではないだろうけれど、レオは小さく息を吐くと、ストーブの正面、少し離れた場所にどさりと体を横たえた。大きな体がゆっくりと沈み込み、金色の目が半分だけ開いたり閉じたりを繰り返す。

オレンジ色の光が、レオの豊かな毛並みを照らしていた。冬毛に覆われたその体は、まるで本物の暖炉の前にうずくまる獣のようで、私は思わずその姿に見入ってしまった。

時計の針が進むにつれて、部屋の空気は少しずつ緩んでいった。それまで肩にこわばっていた寒さが、いつの間にか消えている。レオは完全に目を閉じ、喉の奥から低く、途切れることのない音を鳴らしはじめた。

外では相変わらず、冷たい風が窓を叩いている。けれどこの部屋の中だけは、小さな光と、大きな猫の体温とで、静かに満たされていた。

私はマグカップを両手で包みながら、レオの隣に腰を下ろした。何も言わずとも、こうして同じ暖かさを分け合う時間があるということが、この季節の何よりの贅沢のように思えた。

窓の外の灰色は、まだしばらく晴れそうにない。けれど、それでよかった。


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