2026年9月13日日曜日
マンチカンという猫の月見
夜風がすこし冷たくなってきた九月の終わり、縁側の窓を開けると、丸い月がぽっかりと浮かんでいた。
マンチカンのまるは、短い脚をふんばって窓辺にちょこんと座ると、じっと空を見上げた。いつもならおもちゃを追いかけて部屋じゅうを走り回っているまるが、今夜だけはやけに静かだった。
「まる、お月見する?」
飼い主がそう声をかけると、まるはひげをぴくりと動かしただけで、答えるかわりに月から目を離さなかった。縁側には、飼い主が用意した小さな月見団子と、すすきを一本挿した花瓶が置かれている。まるはその団子のにおいを一度くんくんと嗅いだが、すぐに興味をなくしたように、また窓の外へと視線を戻した。
月の光が畳の上に細長く伸びて、まるの丸い背中をやわらかく照らしている。短い脚を体の下にしまい込み、まんまるになったその姿は、まるで月そのものが縁側に転がり込んできたようだった。
しばらくすると、まるは小さくあくびをひとつして、飼い主のひざの上にどすんと乗ってきた。温かくて柔らかい重みが伝わってくる。まるはそのまま丸くなり、月を見ていたときと同じ静かな目で、今度は飼い主の顔をじっと見上げた。
「今日はゆっくり月を見ような」
そうつぶやくと、まるは満足したように目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らしはじめた。空にはあいかわらず大きな月が浮かんでいて、すすきの穂が風に揺れるたび、かさかさと小さな音を立てていた。
短い脚の小さな猫と、静かな夜と、まんまるの月。特別なことは何も起きなかったけれど、それだけでじゅうぶんに満たされた夜だった。
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