2026年9月19日土曜日
癒される秋の夜の温かい飲み物と毛布とメインクーン
夜の九時を過ぎた頃、窓の外では虫の声がすっかり秋のものに変わっていた。夏の名残を感じさせた蝉の声はいつの間にか消え、今はコオロギの澄んだ音だけが、静かな部屋の中まで届いてくる。
私はキッチンでマグカップに湯気の立つホットミルクを注いだ。カップの中でゆっくりと揺れる白い湯気を眺めながら、リビングへ戻る。ソファの上には、すでに毛布を敷いて丸くなっている大きな影があった。
「レオ、また先に陣取ってる」
そう声をかけると、メインクーンのレオはゆっくりと片目だけを開けて私を見た。ふさふさとした尻尾の先が、返事をするようにゆらりと動く。彼はこの毛布がすっかり気に入っていて、秋が深まるにつれて、夜になるとまっさきにここへやってくるようになった。
私はマグカップをテーブルに置き、毛布の隙間に体を滑り込ませる。とたんに、レオの温かい体温がこちらに伝わってきた。大きな体を持つメインクーンだからこそ、まるで湯たんぽのような心地よさがある。彼は少し身じろぎしただけで、私の膝の上にゆったりと頭を預けてきた。
窓の外では、少し欠けた月が雲の切れ間から顔をのぞかせている。部屋の照明を少し落とすと、月明かりと小さなランプの光だけが、毛布の毛羽立ちをやわらかく照らした。
ホットミルクを一口飲むと、じんわりとした温かさが喉から胸の奥まで広がっていく。同時に、レオの喉からもゴロゴロという低い音が聞こえてきた。まるで、私の温かさに応えるかのような音だった。
「今日も一日、お疲れさま」
誰に言うでもなくつぶやくと、レオが薄っすらと目を開けて、また閉じた。彼にとっては、そんな言葉の意味よりも、今この瞬間の毛布の暖かさと、隣にいる人間の存在の方がずっと大事なのかもしれない。
秋の夜は、日に日に冷え込みが増してくる。玄関を出れば冷たい風が頬をかすめ、コートの前をかき合わせる季節がもうすぐそこまで来ている。それでも、この部屋の中だけは、まるで別世界のように穏やかな時間が流れていた。
マグカップの中身が半分ほどになった頃、レオはようやく完全に目を閉じ、規則正しい寝息を立て始めた。長い尻尾が私の腕にそっと絡みつくように置かれている。その重みと温もりに、私はしばらく身動きが取れなくなった。
こうしてただ座っているだけなのに、なぜこんなにも満たされた気持ちになるのだろう。忙しい毎日の中で忘れかけていた「何もしない時間」の贅沢さを、この子はいつも思い出させてくれる。
窓の外の虫の声が、少しずつ遠くなっていくように感じられた。眠気が私にも忍び寄ってくる。マグカップの残りをゆっくりと飲み干し、毛布をレオと一緒にもう少し引き寄せた。
秋の夜は長い。だからこそ、こうして温かい飲み物と毛布と、そばで眠る大きな猫がいてくれることが、何より幸せなことなのだと、しみじみと感じた夜だった。
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