2026年9月19日土曜日
癒される秋のサネカズラの実る垣根と黒猫
古い家の垣根に、赤い実がいくつも顔を出していた。サネカズラの実だ。艶やかな赤い粒が寄り集まって、まるで小さな提灯のように垂れ下がっている。秋の陽射しを受けて、その実はほんのりと光っていた。
垣根の下には、一匹の黒猫がうずくまっていた。艶のある黒い毛並みが、赤い実の色とよく映える。猫は特に何をするでもなく、ただ静かに座って、通り過ぎる風を眺めているようだった。
「今日もここにいたのか」
そう声をかけたのは、この道を毎日散歩する老人だった。黒猫は顔だけをこちらに向け、小さく鳴いた。挨拶のつもりなのかもしれない。老人は垣根の前で足を止め、サネカズラの実にそっと触れた。
「昔はこの実で、髪を整える油を作ったんだよ」
独り言のようにつぶやくと、黒猫はふぁあ、と大きなあくびをした。話を聞いているのかいないのか、その表情からは読み取れない。だが、老人はそれで満足そうだった。誰かがそばにいてくれる、というだけで十分なのかもしれない。
秋風が垣根を揺らすたびに、サネカズラの実がわずかに震え、赤い光がこぼれるように散らばった。黒猫はその光の粒を目で追うように、ゆっくりと瞬きをした。
やがて日が傾き始めると、黒猫は垣根の隙間から姿を消した。まるで秋の午後のひとときだけ、そこに現れる小さな主のように。
老人は誰もいなくなった垣根を見上げ、また明日もここに来ようと思いながら、静かに歩き出した。赤い実だけが、変わらずそこに残っていた。
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