2026年9月23日水曜日
癒される秋の夕日と橙色に染まる雲と黒猫
秋の夕暮れ、空が静かに色を変えていく時間があった。
住宅街の路地の角、古びたブロック塀の上に、一匹の黒猫が座っていた。毛並みは夜のように深く、その黒さだけが、燃えるような夕焼けの中でひときわ際立って見えた。
猫はじっと西の方を見つめていた。空はもう青さを失い、橙色に染まった雲が、まるで綿菓子をちぎったように、ゆったりと流れていく。太陽はビルの隙間に半分ほど隠れ、まだ力強い光を放ちながら、街全体を淡いオレンジで包み込んでいた。
風が少し冷たくなってきたのを感じたのか、猫は小さく尻尾を動かした。けれど、その場を離れる気配はない。むしろ、この時間そのものを味わうように、目を細めて夕日を見つめ続けていた。
塀の下には、誰かの家の庭からキンモクセイの香りがふわりと漂ってくる。それに混じって、どこか遠くで金木犀に負けじと鳴く、名残の虫の声も聞こえてくる。秋という季節が、静かに、けれど確かにそこにあった。
雲はゆっくりと形を変え、橙色から少しずつ紫がかった色へと移り変わっていく。猫の輪郭も、その変化に合わせて少しずつ闇に溶け込んでいくようだった。それでも、二つの瞳だけは、最後の light をしっかりと映していた。
やがて太陽が完全に沈み、空が藍色に近づいてきたころ、黒猫はふっと欠伸をひとつして、塀からゆっくりと飛び降りた。夕焼けの余韻をまとったまま、猫は静かに路地の奥へと姿を消していった。
その後にはただ、橙色の名残とわずかな星の光だけが、秋の夜へと変わっていく空に残されていた。
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