2026年9月22日火曜日

癒される秋夜のティーポットと湯気とマンチカンという猫

癒される秋夜のティーポットと湯気とマンチカンという猫

静かな秋の夜、キッチンの隅で小さな音が鳴った。

コンロの火が消えると、ティーポットの口からふわりと白い湯気が立ち上る。窓の外はすっかり暗く、虫の声だけが遠くから聞こえていた。

「今日も一日、よく頑張ったね」

そう呟きながらカップに紅茶を注ぐと、湯気がゆっくりと部屋の灯りに透けて、金色に光る帯のように立ち上っていく。その光を追いかけるように、足元でひとつの影が動いた。

丸い体に短い足――マンチカンのハルだった。テーブルの脇にちょこんと座り、鼻をくんと動かしながら、湯気の匂いを確かめている。

「ハル、お茶が気になるの?」

問いかけても答えは返ってこない。ただ、金色の目がじっとカップを見つめている。湯気が揺れるたびに、その瞳の中でも小さな光が揺れた。

カップを持って窓辺の椅子に腰を下ろすと、ハルもとことこと歩いてきて、足元にぴたりと寄り添った。短い前足を伸ばして、ソファの生地に爪を軽く立てる。それから丸くなって、小さくため息をつくように息を吐いた。

窓の外では、隣の家の庭木がさわさわと秋の風に揺れている。虫の声はさっきよりも近くなった気がした。カップから立つ湯気は、もう最初のような勢いはなく、ゆらゆらと頼りなく漂うだけになっている。それでも、その頼りなさがちょうどいい。忙しかった一日の輪郭が、少しずつやわらかくほどけていくようだった。

「今日はもう、何も考えなくていいか」

そう声に出してみると、ハルが薄目を開けてこちらを見た。まるで「それでいいよ」と言っているみたいに、ふにゃ、と小さく鳴いて、また目を閉じる。

紅茶を一口飲むと、温かさが喉から胃へと落ちていくのがわかった。ハルの体温が足に伝わってくる。湯気はもうほとんど見えなくなっていたけれど、カップの中にはまだ確かな温かさが残っていた。

秋の夜は静かに深まっていく。ティーポットの湯気も、丸くなった猫の呼吸も、どちらも同じ速さで、ゆっくりと部屋の時間を進めていた。

明日のことは、また明日考えればいい。今はただ、この温かさとハルの寝息に包まれていよう――そんな気持ちで、窓の外の暗闇をぼんやりと眺め続けた。


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