2026年9月22日火曜日
秋晴れとベランダのハーブとマンチカンという猫
朝、カーテンを開けると、雲ひとつない秋晴れが広がっていた。
夏の名残の湿気はどこかに消えて、空気はどこまでも澄んでいる。深く息を吸い込むと、ひんやりとした風の中に、ふわりと爽やかな香りが混じった。ベランダで育てているハーブたちが、朝露を纏いながら光を浴びている匂いだった。
ミントやローズマリー、レモンバームの鉢が並ぶベランダの片隅に、丸くうずくまっている影がある。マンチカンのモモだ。短い足を折りたたむようにして香草の鉢の間に収まり、目を細めて日向ぼっこをしている。
「こんなところにいたのね」
声をかけると、丸い瞳がゆっくりとこちらを向いた。返事をするように小さく鳴いて、それからまた前足に顎を乗せて丸くなる。急かすことも慌てることもない、その姿がなんだか可笑しくて、思わず頬が緩んだ。
ハーブの葉に触れると、指先に香りが移る。ローズマリーの少し尖った葉、ミントの丸い葉、レモンバームの柔らかな産毛。それぞれ違う香りなのに、秋の澄んだ空気の中で混ざり合うと、不思議と一つの穏やかな匂いになる。モモもその匂いが好きなのか、時々鼻をひくつかせては、また眠たそうに目を閉じていた。
しばらくハーブの世話をする。伸びすぎた枝を少し整え、乾いた土に水をやる。じょうろから落ちる水の音と、遠くから聞こえる小鳥の声。それだけで十分すぎるほど静かで、豊かな時間だった。
モモは水やりの音に反応して、片耳だけをぴくりと動かす。でも起き上がる気配はない。短い手足を持て余すように投げ出して、すっかり寛いでいる。マンチカンらしい、あの少し不格好で、けれど何より愛らしい寝相だ。
空を見上げると、澄んだ青の中に、ちぎれたような薄い雲が一筋だけ流れていた。夏の入道雲とは違う、軽やかで儚い雲。季節が静かに移り変わっていくのを、こんな何気ない朝に気づかされる。
ベランダの手すりに肘をついて、しばらくぼんやりと空を眺めた。隣ではモモが相変わらず香草の影で丸くなっている。二人分の呼吸のリズムだけが、秋の空気の中にゆっくりと溶けていくようだった。
忙しい毎日の中で、こんなふうに立ち止まる時間はそう多くない。けれど、ハーブの香りとマンチカンの寝顔、そして澄み切った秋の空があれば、それだけで十分に心が満たされる気がした。
やがてモモが大きなあくびをして、ゆっくりと体を伸ばす。短い足でとことこと歩き出し、日向を追いかけるように場所を移動した。その後ろ姿を見送りながら、今日という一日が、なんだかとても優しいものになりそうな予感がした。
秋晴れの空と、ベランダで香るハーブと、隣で丸くなる小さな猫。それだけで、十分すぎるほど癒される朝だった。
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