2026年9月21日月曜日
癒される秋の夜長のジグソーパズルとマンチカンという猫
秋の夜は、驚くほど静かに更けていく。
窓の外では虫の声が控えめになり、代わりに部屋の中の小さな音がよく聞こえるようになる。時計の秒針、ページをめくる音、そして——カタッ、という小さなピースの音。
その夜、私はダイニングテーブルの上に千枚のジグソーパズルを広げていた。箱の蓋には、どこかヨーロッパの街並みらしい絵。屋根の色も、空の色も、少しずつ違う青とオレンジが混ざり合っていて、見ているだけで気持ちが落ち着いてくる。
隣の椅子には、丸くなったマンチカンが一匹。名前はハル。短い足を折り曲げて、まるで置物のように座っている。ハルはパズルそのものには興味がないらしいが、テーブルの上で人が何かに集中している気配だけは、いつも気になるようだった。
「ここ、この空の色だと思うんだけどな」
私が呟くと、ハルは片耳だけをこちらに向けた。返事のつもりなのか、単に反射なのか、それは永遠の謎だ。
秋の夜長というのは、不思議な時間だ。日が短くなって、気づけば外はもう真っ暗。だからといって特別なことをする必要はなくて、ただ静かに、手元の作業に没頭するだけでいい。
ピースを一つ手に取る。形をよく見て、色の濃淡を確かめて、合う場所を探す。合わないとわかればまた戻す。その繰り返しは、何かを「解決する」というよりも、ただ「時間と一緒にいる」ような感覚に近かった。
ふと視線を上げると、ハルがテーブルの端からじっとこちらを見ていた。丸い目、短い前足、座っているだけなのにどこか堂々としている。マンチカンという猫は、体は小さいのに存在感だけは人並み以上だ。
「手伝ってくれる?」
もちろん答えはない。けれどハルは、まるでその質問を聞いたかのように、ゆっくりと目を細めた。猫のまばたきは、信頼のしるしだという。だとすれば、それは十分すぎる返事だった。
パズルは半分ほど進んだところで、屋根の一角がぴたりとつながった。小さな達成感が、静かな部屋にじんわりと広がる。誰かに報告するようなことでもないけれど、こういう夜には、小さな喜びがちゃんと心に残る。
窓の外では、少し冷たくなった風が木々を揺らしている音がする。部屋の中は暖かく、テーブルの明かりだけがピースの色をくっきりと照らしていた。
ハルが小さく伸びをして、また丸くなる。パズルはまだ半分残っているけれど、今夜中に終わらせる必要はない。秋の夜は長い。焦らず、少しずつ、また明日も続きをやればいい。
そう思うと、なんだか少し肩の力が抜けた。
猫と過ごす秋の夜長は、何をしても、何をしなくても、それだけで十分に癒される時間なのかもしれない。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
コータのAmazonページへ
よろしければ、
のぞいてみてください
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 件のコメント:
コメントを投稿