2026年7月31日金曜日

黒猫と野良猫

黒猫と野良猫

窓の外から、じっとこちらを見つめる視線に気づいたのは、ある肌寒い秋の朝のことでした。

我が家には、もう七年になる黒猫がいます。名前は「クロ」。艶やかな黒い毛並みと、丸く光る金色の瞳が自慢の、甘えん坊の男の子です。ソファの隅で丸くなって眠るのが好きで、朝はいつも私の布団に潜り込んできて起こしてくれます。そんなクロが、その日は珍しく窓辺から動かず、外をじっと見つめていました。

覗いてみると、そこにいたのは一匹の野良猫でした。茶トラ模様の、少し痩せた体つき。人に慣れていないのか、目が合うとサッと物陰に隠れてしまいます。それでも、しばらくすると恐る恐る顔を出し、またクロの方をじっと見つめる。まるで、ガラス越しに会話でもしているかのようでした。

少しずつ縮まる距離

最初のうちは、野良猫は庭の隅からこちらの様子をうかがうだけでした。クロも警戒するように、低い声で唸ることもありました。けれど不思議なもので、日を追うごとに二匹の間には、どこか通じ合うような空気が生まれていきました。

ある日、庭に少しだけご飯を置いてみることにしました。野良猫は最初こそ遠巻きにしていましたが、やがて少しずつ距離を詰め、ゆっくりとお皿に近づいてきました。その様子を、クロは窓越しにじっと見守っていました。まるで「大丈夫だよ」とでも言うように、静かに座って寄り添うような姿勢で。

家で暮らす猫と、外で生きる猫。同じ猫でも、その境遇はまったく違います。クロは暖かい部屋の中で、決まった時間にご飯をもらい、安心して眠ることができます。一方の野良猫は、雨の日も風の日も、自分の力で食べ物を探し、身を守りながら生きていかなければなりません。

それぞれの生き方

野良猫を見ていると、たくましさと同時に、どこか切なさも感じます。人懐っこそうに近づいてくる子もいれば、決して心を開こうとしない子もいる。それぞれに、これまで歩んできた道のりがあるのだろうと想像すると、胸が締め付けられるような気持ちになります。

だからといって、すべての野良猫を家に迎え入れることはできません。けれど、できることは小さくてもあります。無理のない範囲で食事を用意したり、寒い季節には暖を取れる場所を作ってあげたり。そして何より、その子のペースを尊重しながら、そっと見守ること。

クロと野良猫の距離が、この先どこまで縮まるのかはわかりません。もしかすると、ずっと窓越しの関係のままかもしれません。それでも、二匹が互いの存在を認め合い、静かな時間を共有している姿を見ると、生き方は違っても、通じ合う何かがあるのだと感じずにはいられません。

おわりに

家猫と野良猫、それぞれの暮らしにはそれぞれの物語があります。温かい部屋の中から外の世界を見つめるクロの瞳には、どんな景色が映っているのでしょうか。今日もまた、窓辺には小さな来訪者の姿があるかもしれません。


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