2026年4月12日日曜日

二ホンイシガメと川

二ホンイシガメと川

私はニホンイシガメのメス。
今日は、勝手に川に遊びに来た。

本当は、いつもの静かな場所でじっとしているはずだった。
でも、朝の光がやけにやさしくて、
水の流れる音が、遠くから呼んでいる気がした。

気がつけば、私はゆっくりと歩き出していた。
重たい甲羅を揺らしながら、草の間を抜けて、
そして、この川へとたどり着いた。

水は思っていたよりも冷たくて、
でも、どこか懐かしい。
足先から伝わる流れが、心までほどいていく。

小さな魚たちが、私の影に驚いて散っていく。
それをぼんやりと眺めながら、私は少しだけ笑った。

ここには時間がない。
ただ、水が流れて、風が揺れて、光がきらめいている。

人間たちは忙しそうにしているけれど、
こうして流れに身を任せるだけの日も、
きっと悪くないと思う。

今日は、誰にも見つからないように、
もう少しだけ、この川にいよう。

そしてまた、何もなかった顔をして、
静かな場所へ帰るのだ。

そんな一日も、きっと悪くない。

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