黒猫とアゲハ蝶
庭のすみで、黒猫がじっと座っていました。
夏のはじまりのような光が、
草の上にやわらかく落ちていました。
黒猫は、何かを待っているようでした。
風が少しだけ吹いて、
葉っぱが小さく揺れました。
そのとき、
一匹のアゲハ蝶がやってきました。
黄色と黒の羽をひらひらさせながら、
花から花へと、静かに飛んでいました。
黒猫は追いかけませんでした。
ただ、その小さな羽の動きを、
まばたきも忘れたように見つめていました。
アゲハ蝶は、黒猫の前を通りすぎ、
少し高く舞い上がりました。
まるで、
「こっちへおいで」と言っているようでした。
けれど黒猫は動きません。
草の上に座ったまま、
世界の秘密を見つけたような顔をしていました。
アゲハ蝶は空へ向かって飛び、
やがて光の中に溶けるように見えなくなりました。
黒猫はしばらく、
その先の空を見上げていました。
庭にはまた、
静かな時間が戻ってきました。
でも、さっきまでとは少し違っていました。
黒猫のまわりには、
アゲハ蝶が残していった小さな物語が、
まだふわりと漂っているようでした。
何も言葉はありません。
ただ、黒猫とアゲハ蝶が出会っただけ。
それだけなのに、
その庭は少しだけ、
本の中の世界みたいに見えました。
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