2026年5月22日金曜日

黒猫とカタツムリ

黒猫とカタツムリ

雨上がりの庭に、
黒猫が一匹すわっていました。

空にはまだ、
灰色の雲が少し残っていて、
葉っぱの先からは、
しずくがぽたりと落ちていました。

黒猫は、
濡れた石の上をじっと見つめています。

そこには、
小さなカタツムリがいました。

とてもゆっくり、
とても静かに、
カタツムリは前へ進んでいました。

黒猫は首を少しかしげました。

「そんなにゆっくりで、
どこまで行けるのだろう」

そんなことを思ったのかもしれません。

カタツムリは、
急ぐこともなく、
焦ることもなく、
自分の家を背負ったまま、
少しずつ進んでいきます。

黒猫は、
その後ろを追いかけるでもなく、
前に回り込むでもなく、
ただそばで見ていました。

庭の草は雨に洗われて、
いつもより緑が深く見えました。

小さな水たまりには、
曇り空と黒猫の耳が、
ゆらゆら映っています。

カタツムリは、
小さな葉っぱの下で一度止まりました。

黒猫も、
同じように動きを止めました。

まるで二匹だけが、
雨上がりの時間の中に
取り残されたようでした。

速く走れる黒猫と、
ゆっくり進むカタツムリ。

けれどその日、
黒猫は走りませんでした。

ただ、
小さな命が進んでいくのを、
静かに見守っていました。

やがて雲のすき間から、
やわらかな光が差し込みました。

カタツムリの殻が、
少しだけきらりと光りました。

黒猫はまばたきをして、
しっぽをゆっくり揺らしました。

小さな世界にも、
ちゃんと物語はある。

急がなくても、
遠くまで行けることがある。

黒猫はそれを、
雨上がりの庭で、
カタツムリから教えてもらったのかもしれません。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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