わたしはニホンイシガメのメス。
静かな川の流れが好きで、
今日はこっそり、飼い主に黙って遊びに出ていた。
水の中はやっぱり落ち着く。
やわらかい光が揺れて、石のすき間を流れる水音が心地いい。
時間なんて、ゆっくり溶けていくみたいだった。
気づけば、少し遊びすぎたみたいで。
ふとした瞬間に、胸の奥がそわそわした。
「そろそろ、帰ろうかな」
そう思って、見慣れた道をのそのそと戻る。
家に近づくにつれて、なんだか空気が違う。
扉の前にたどり着いたとき、すぐにわかった。
飼い主が、待っていた。
いつもの場所で、じっと。
少しだけ安心したような顔で、でもどこか心配そうで。
どうやら、わたしのことを探していたらしい。
小さく息を吐いて、わたしを見つめるその視線に、
なんだか少しだけ、悪いことをした気分になる。
わたしは何も言えないけれど、
そっと近づいて、いつもの場所に落ち着いた。
今日は、ちゃんと帰ってきた。
川は好きだけど、
こうして待っていてくれる場所があるのも、悪くない。
しばらくは、外出するのはやめておこう。
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