外はよく晴れていて、
青い空の中を、白い雲がゆっくり流れていました。
黒猫は、何も言わずに、
その雲をじっと見つめていました。
まるで、雲の形が変わっていくたびに、
そこに小さな物語を見つけているようでした。
丸い雲は、ふわふわの毛糸玉に見えました。
長く伸びた雲は、
どこか遠くへ続く道のようにも見えました。
黒猫は、その道を歩いていく自分を、
少しだけ想像していたのかもしれません。
雲の上には、音のしない世界があって、
やわらかな光だけが広がっている。
そこでは、急がなくてもよくて、
誰かに呼ばれることもなくて、
ただ好きな場所で丸くなって眠れる。
そんな世界を、
黒猫は空の向こうに見ていたようでした。
部屋の中には、静かな時間が流れていました。
本のページをめくる音も、
時計の針の音も、
今日は少しだけやさしく聞こえました。
雲は、少しずつ形を変えていきます。
さっきまで毛糸玉だった雲は、
いつの間にか小さな船のようになっていました。
黒猫は、しっぽをゆっくり揺らしました。
もしかすると、
その船に乗ってみたいと思ったのかもしれません。
雲の船に乗って、
屋根の上を越えて、
町を越えて、
知らない場所まで行ってみる。
けれど、黒猫は窓辺から動きません。
遠くへ行きたい気持ちと、
この場所にいたい気持ち。
そのどちらも大切にしているように、
ただ静かに空を見上げていました。
やがて、雲は太陽の前を通りました。
部屋の光が少しやわらかくなり、
黒猫の背中にも淡い影が落ちました。
その姿は、まるで一冊の本の中に出てくる、
小さな旅人のようでした。
どこにも行かなくても、
心だけは遠くへ行ける日があります。
空を眺めるだけで、
雲の形を追いかけるだけで、
少しだけ世界が広く見える日があります。
黒猫と雲。
ただそれだけの景色なのに、
そこには静かな物語がありました。
今日も黒猫は、窓辺に座っています。
そして流れていく雲を見ながら、
誰にも聞こえない小さな夢を、
そっと空に浮かべているのかもしれません。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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