2026年6月16日火曜日

黒猫とスイカ

黒猫とスイカ

夏の昼下がり、台所のすみで黒猫がじっと座っていました。

窓の外では蝉が鳴いていて、白いカーテンが風に少しだけ揺れています。

テーブルの上には、大きなスイカがひとつ置かれていました。

黒いしま模様の入った丸いスイカは、まるで小さな夏の星みたいに、そこだけ特別な存在感を放っていました。

黒猫は、スイカのまわりをゆっくり一周します。

くんくんと匂いをかいで、前足で少しだけ触れて、それから首をかしげました。

「これは食べものなのか、それとも丸い友だちなのか」

そんなことを考えているような顔でした。

やがてスイカは包丁で切られ、赤い中身が顔を出します。

みずみずしい赤色と、小さな黒い種。

その色を見た黒猫は、少しだけ目を大きくしました。

夏の光がスイカの表面に反射して、台所の中まで少し涼しくなったように見えます。

お皿にのせられたスイカのそばで、黒猫は静かに座りました。

食べるわけでもなく、ただそこにいます。

赤いスイカと黒猫。

その組み合わせは、絵本の一ページみたいにかわいくて、少し不思議でした。

冷たいスイカをひと口食べると、甘い水分が口の中に広がります。

暑かった部屋の空気も、少しだけやわらかくなった気がしました。

黒猫はスイカを見つめたあと、ゆっくりと床に寝そべります。

ひんやりした床が気持ちいいのか、しっぽを小さく動かしながら目を細めました。

夏は少し暑くて、少し退屈で、少しだけ特別です。

大きな出来事がなくても、冷えたスイカと黒猫がいるだけで、その日はちゃんと物語になります。

食べ終わったあとのお皿には、赤い果汁が少しだけ残っていました。

黒猫はそれを見て、また首をかしげます。

まるで、夏の秘密を見つけたような顔でした。

黒猫とスイカ。

それは、暑い日の中に置かれた、小さくて涼しい物語なのかもしれません。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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