2026年6月4日木曜日

黒猫と観葉植物

黒猫と観葉植物

部屋のすみっこに、
小さな観葉植物を置いた。

大きな理由があったわけではない。
ただ、部屋の中に少しだけ緑があると、
空気までやわらかくなるような気がした。

鉢は白くて、
葉っぱはつやつやしている。

窓から入る午後の光を受けて、
葉の表面が少しだけ光っていた。

そのそばに、
黒猫がやってきた。

黒猫はすぐには近づかず、
少し離れたところで座った。

まるで、
新しくやってきた小さな住人を、
静かに見定めているようだった。

観葉植物は、もちろん何も言わない。

ただそこに立っている。

黒猫も、何も言わない。

ただじっと見ている。

その静かな時間が、
なんだか本の一ページみたいに見えた。

黒猫はゆっくり前足を出して、
鉢の近くまで歩いた。

葉っぱのにおいをかぐように、
鼻先を少し近づける。

でも、触らない。
倒さない。

ただ、そっと確かめるだけ。

その姿が、
少し慎重で、少し優しくて、
見ているこちらまで静かな気持ちになった。

部屋の中にあるものは、
どれも大きな出来事ではない。

古い本。
小さな机。
やわらかいカーテン。
白い鉢に入った観葉植物。
そして黒猫。

それだけなのに、
部屋の景色が少し変わった気がした。

緑があると、
時間の流れが少しゆっくりになる。

黒猫がいると、
その静けさにぬくもりが足される。

観葉植物は、
毎日少しずつ葉を伸ばしていく。

黒猫は、
毎日少しずつその存在に慣れていく。

もしかしたら、
仲良くなるというのは、
大きな出来事ではなくて、
こういう小さな距離が縮まることなのかもしれない。

ある日、黒猫は観葉植物のそばで丸くなった。

葉っぱの影が、
黒い背中にそっと落ちている。

窓の外では風が吹いて、
カーテンが少しだけ揺れた。

観葉植物の葉も、
ほんの少し揺れた。

黒猫は目を細めたまま、
眠っているのか、起きているのか、
わからない顔をしていた。

部屋の中に、
静かな緑と、
静かな黒猫がいる。

それだけで、
今日の午後は少しやさしい。

何か特別なことがなくても、
小さな葉っぱが光っていて、
黒猫がそのそばで休んでいる。

そういう景色を見つけられた日は、
それだけで、
少しだけいい日だったと思える。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

PR
コータのAmazonページへ

よろしければ、
のぞいてみてください


0 件のコメント:

コメントを投稿