机のすみっこに、
小さな貯金箱が置いてありました。
丸くて、少し古くて、
振ると小さくちゃりんと音がします。
黒猫は、その音が気になるようでした。
前足をそっと伸ばして、
貯金箱の横をちょんと触ります。
ちゃりん。
部屋の中に、
小さな音がひとつ落ちました。
黒猫は驚いたように耳を立て、
それから何もなかったふりをして、
静かに座り直しました。
貯金箱の中には、
たくさんのお金が入っているわけではありません。
買い物のあとに残った小銭。
机の上に置きっぱなしだった十円玉。
いつか使うかもしれないと思って、
なんとなく入れてきた小さなお金たち。
でも、貯金箱は黙っていました。
少なくても、
急がなくても、
ひとつずつ入ってくる音を、
ちゃんと覚えているようでした。
黒猫は貯金箱の前で丸くなります。
まるで、
その小さな宝物を守っているみたいに。
外では風が吹いて、
カーテンが少しだけ揺れました。
部屋の中は静かで、
貯金箱も、黒猫も、
何も急いでいません。
大きな夢も、
小さな願いも、
最初はきっと、
こんな小さな音から始まるのかもしれません。
ちゃりん。
またひとつ、
明日の分の音が入りました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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