2026年6月6日土曜日

黒猫と貯金箱

黒猫と貯金箱

机のすみっこに、
小さな貯金箱が置いてありました。

丸くて、少し古くて、
振ると小さくちゃりんと音がします。

黒猫は、その音が気になるようでした。

前足をそっと伸ばして、
貯金箱の横をちょんと触ります。

ちゃりん。

部屋の中に、
小さな音がひとつ落ちました。

黒猫は驚いたように耳を立て、
それから何もなかったふりをして、
静かに座り直しました。

貯金箱の中には、
たくさんのお金が入っているわけではありません。

買い物のあとに残った小銭。

机の上に置きっぱなしだった十円玉。

いつか使うかもしれないと思って、
なんとなく入れてきた小さなお金たち。

でも、貯金箱は黙っていました。

少なくても、
急がなくても、
ひとつずつ入ってくる音を、
ちゃんと覚えているようでした。

黒猫は貯金箱の前で丸くなります。

まるで、
その小さな宝物を守っているみたいに。

外では風が吹いて、
カーテンが少しだけ揺れました。

部屋の中は静かで、
貯金箱も、黒猫も、
何も急いでいません。

大きな夢も、
小さな願いも、
最初はきっと、
こんな小さな音から始まるのかもしれません。

ちゃりん。

またひとつ、
明日の分の音が入りました。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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