黒猫が、窓辺で丸くなっていました。
午後の光が、カーテンのすき間から静かに入り、床の上にやわらかな模様を作っていました。
黒猫はその光の中で、目を細めながら、ただ静かに眠っていました。
そこへ、小さな子猫がやってきました。
まだ歩き方も少しぎこちなくて、足音もとても小さく、けれど好奇心だけは大きく膨らんでいるようでした。
子猫は黒猫のそばまで来ると、少しだけ首をかしげました。
この大きな黒い猫は、怖いのだろうか。
それとも、やさしいのだろうか。
そんなことを考えているように、じっと黒猫を見つめていました。
黒猫はゆっくりと目を開けました。
金色の瞳が、子猫を静かに見つめます。
子猫は少し驚いて、後ろに下がりました。
けれど、黒猫は怒ることもなく、ただしっぽを一度だけ、ゆっくり動かしました。
それはまるで、
「ここにいてもいいよ」
と言っているようでした。
子猫はおそるおそる近づいて、黒猫のとなりに座りました。
最初は少し距離がありました。
でも、時間がたつにつれて、その距離は少しずつ短くなっていきました。
子猫は黒猫のまねをして、同じように丸くなろうとしました。
けれど、うまく丸くなれずに、ころんと横に倒れてしまいました。
黒猫はそれを見て、静かに子猫へ顔を近づけました。
そして、小さな頭をそっとなめました。
子猫は安心したように目を閉じました。
部屋の中には、大きな音も、特別な出来事もありません。
ただ、黒猫と子猫が並んでいるだけです。
でも、その光景には、言葉ではうまく説明できないあたたかさがありました。
誰かに守られている安心感。
誰かのそばにいてもいいと思える静けさ。
そんなものが、小さな部屋の中に満ちていました。
やがて子猫は、黒猫の体にぴったりくっついて眠りました。
黒猫は少しだけ目を開けて、その小さな寝顔を見ました。
そしてまた、ゆっくり目を閉じました。
窓の外では、風が静かに木の葉を揺らしています。
部屋の中では、黒猫と子猫が同じ夢を見ているように眠っています。
黒猫と子猫。
それは、何か大きな物語ではないのかもしれません。
けれど、見ているだけで心が少しやわらかくなる、小さな物語でした。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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