夏の午後、部屋の中は少しだけ暑くなっていました。
窓の外では、まぶしい光が白いカーテンを通りぬけて、床の上にやわらかく落ちていました。
机の上には読みかけの本。
その横には、少しだけぬるくなったお茶。
そして部屋のすみっこには、黒猫が一匹、じっと座っていました。
黒猫は暑いのが苦手です。
けれど、冷たすぎる風もあまり好きではありません。
クーラーのスイッチを入れると、部屋の空気が少しずつ変わっていきました。
さっきまで重たかった空気が、ゆっくり軽くなっていきます。
黒猫は耳を少しだけ動かしました。
風の音を聞いているようでした。
クーラーの風が直接当たる場所には行かず、少し離れた床の上に移動します。
そこは冷えすぎず、暑すぎず、ちょうどいい場所でした。
黒猫は前足をそろえて座り、しばらく部屋の中を見渡しました。
まるで、ここなら安心して休めると確認しているようでした。
やがて黒猫は、ゆっくり体を丸めました。
しっぽを体の横にそっと寄せて、目を細めます。
クーラーの小さな音。
カーテンのゆれ。
本のページが少しだけ開いたままの静かな机。
何か特別なことがあるわけではありません。
でも、暑い日に少し涼しい部屋があるだけで、心まで休まるような気がしました。
黒猫は、気持ちよさそうに眠りはじめました。
その寝顔を見ていると、クーラーの風まで少しやさしくなったように感じます。
夏の午後。
黒猫とクーラー。
小さな部屋の中に、静かな涼しさが流れていました。
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