2026年6月5日金曜日

黒猫とクーラー

黒猫とクーラー

夏の午後、部屋の中は少しだけ暑くなっていました。

窓の外では、まぶしい光が白いカーテンを通りぬけて、床の上にやわらかく落ちていました。

机の上には読みかけの本。

その横には、少しだけぬるくなったお茶。

そして部屋のすみっこには、黒猫が一匹、じっと座っていました。

黒猫は暑いのが苦手です。

けれど、冷たすぎる風もあまり好きではありません。

クーラーのスイッチを入れると、部屋の空気が少しずつ変わっていきました。

さっきまで重たかった空気が、ゆっくり軽くなっていきます。

黒猫は耳を少しだけ動かしました。

風の音を聞いているようでした。

クーラーの風が直接当たる場所には行かず、少し離れた床の上に移動します。

そこは冷えすぎず、暑すぎず、ちょうどいい場所でした。

黒猫は前足をそろえて座り、しばらく部屋の中を見渡しました。

まるで、ここなら安心して休めると確認しているようでした。

やがて黒猫は、ゆっくり体を丸めました。

しっぽを体の横にそっと寄せて、目を細めます。

クーラーの小さな音。

カーテンのゆれ。

本のページが少しだけ開いたままの静かな机。

何か特別なことがあるわけではありません。

でも、暑い日に少し涼しい部屋があるだけで、心まで休まるような気がしました。

黒猫は、気持ちよさそうに眠りはじめました。

その寝顔を見ていると、クーラーの風まで少しやさしくなったように感じます。

夏の午後。

黒猫とクーラー。

小さな部屋の中に、静かな涼しさが流れていました。


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